サマリー

2025年1月に設立された株式会社Preferred Computing Infrastructureは、株式会社Preferred Networks(PFN)のグループの一社として、PFNが開発したAI半導体MN-Coreシリーズを用いたAIクラウドサービスを提供。今回、同社のネットワーク基盤においてArista Networks製シャーシ型スイッチを導入。同社にとって初採用となったArista Networks製品の選定から検証環境の提供まで、双日テックイノベーションが支援した。

課題・目的

  • 多数の計算ノードを接続して並列処理を行うAI向けインフラのために、コスト効率に優れたネットワーク基盤を実現する
  • 運用管理コストを効果的に軽減したい
  • 運用管理担当者の学習負荷も軽減したい

導入後の効果

  • 信頼性の高いネットワーク製品の導入とともに、あらかじめ必要な情報がそろったWeb管理ツールで効率的な運用管理が実現
  • 双日テックイノベーションのサポートを活用し、検証、導入フェーズで安心感をもって製品選定から機器納品までを完了

導入した商品・ソリューション

プロフィール

株式会社Preferred Computing Infrastructure様

企業名 株式会社Preferred Computing Infrastructure
所在地 東京都千代田区大手町1-6-1
設立 2025年1月
資本金 3億円(PFN 51%、三菱商事 39%、IIJ 10%)
事業内容 PFNが設計・開発を行うAI半導体を組み込んだサーバ等を含む高効率計算基盤の構築およびそれらを活用したAI向けクラウドサービスPreferred Computing Platform(PFCP)の提供・運用・サポート
導入の経緯

はじめに

昨今、生成AIが急速に進化し、AI活用が社会全体にとっての重要課題と認識されるようになった。これまでAI関連ワークロードは大規模なGPUデータセンターで処理されるのが一般的だったが、GPU自体が極めて高額なデバイスであることに加え、消費電力量や発熱量が膨大になる課題もあり、運用できるファシリティが限られるといった難点も散見される。こうした中、株式会社Preferred Networks(PFN)ではAIワークロードに最適化したAI半導体「MN-Coreシリーズ」を開発してきた。

PFNグループの一社である株式会社Preferred Computing Infrastructure(PFCI)は2025年1月、PFN、三菱商事株式会社、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)の3社による合弁会社として設立された。同社ではPFNが開発するAI半導体「MN-Coreシリーズ」を活用し、AI向けクラウドサービス「Preferred Computing Platform(PFCP)」を提供している。2026年4月からは新世代のMN-Core 2を搭載した計算ノードをクラウドサービスとして提供し、国内企業のAI活用を一層強力に後押しすることが期待されている。

PFCPのインフラではMN-Core 2の演算性能を最大限引き出すため、ノード間を接続するネットワーク基盤においても信頼性や安定性に関して極めて高い水準が要求される。

同社ではこの要件を実現するため、データセンター領域で高い信頼性を誇るArista Networks製ネットワークスイッチに着目。すでに北米市場を中心に豊富な実績のある製品だが、同社にとってArista Networks製品の選定は初であった。そこで、製品検証や設定支援など、さまざまな面でネットワーク導入実績の豊富な双日テックイノベーションのサポートを活用した。

プロセス

独自開発のAI半導体をオープンスタンダードのネットワーク基盤で運用する

AI技術の進化は目覚ましい。現在ではAIエージェントが人に代わってさまざまなタスクを自律的に処理し、人とAIの協働によって複雑な業務処理を実行していく新たな働き方が現実のものとなりつつある。一方で、AIを適切に動作させるためには十分なデータ量を与えた上で、複雑かつ大規模な演算処理によって学習させることが不可欠であり、コンピューティングにおける処理負荷の大きさがエネルギーコストの課題にもなりつつある。現在主流となっている大規模GPUデータセンターによるAIワークロード処理は、増大し続けるワークロード量のペースに合わせて施設を増設し続けることは難しく、さらに近年のエネルギー高騰傾向も相まって、コスト回収の課題に直面している。こうしたGPU中心のAI処理に対する解決策として注目されているのが、AIワークロードの処理に特化した専用設計のAI半導体の活用だ。PFNの独自開発による「MN-Coreシリーズ」は異なる設計思想で効率的な計算を実現する。この演算能力をクラウドサービスとして提供するPFCPは、増加するAIワークロード処理ニーズに対して高効率で安定した処理能力を供給することで、国内のAI活用を強力に支援することを意図した重要なサービスである。

株式会社Preferred Computing Infrastructure
代表取締役社長
土井 裕介氏
拡大
株式会社Preferred Computing Infrastructure
代表取締役社長
土井 裕介氏

PFCIの代表取締役社長で、PFNのAIコンピューティング本部 事業推進部を兼任する土井 裕介氏はPFCPの実現までの経緯として、「多数の計算機を連動させてAIの計算などさまざまなコンピューティング・タスクを実行するためのインフラストラクチャーをPFNで作っていました。そのときに問題となっていたのが、高速計算を行う計算機同士の通信をどう制御するかという観点です。ストレージのネットワークと演算用のネットワークを分離するといった手法も使われていますが、投資効率を上げていくためにはマルチユース/マルチパーパスのネットワークが必要だと考えていました。そこで、RoCEv2の技術などを用いて、AIの通信とそれ以外の通信を同じネットワークに共存させる仕組みを研究しており、その共通基盤としてEthernetを使ったインフラを構築しています」と語る。

AIワークロードの処理では大規模な並列演算が実行される。重要なのは、並列処理における遅延を最小化することだ。計算ノード間の接続を多用途のネットワークに統合した場合、たとえば特定ノードに対する通信が大容量ストレージのトラフィックにブロックされてしまうと、その処理が遅延するといった状況が起きてしまう。すると、そのノードの処理完了が遅れ、結果としてシステム全体の処理性能が低下してしまうことになる。例えば、RoCEv2で用いられているPriority-based Flow Control(IEEE 802.1Qbb)はパケットの種類毎に優先順位を割り当て、処理の順序を付けることで全体的な遅延やパケットロスを最小化させることができる。こうした技術を活用することでAIの通信のために専用ネットワークを用意するといった高コストな手法に頼る必要がなくなった。PFNではこうした技術を活用し、Ethernetベースでコスト効率に優れたAI向けネットワークを構築しており、PFCIにおける今回の製品選定においてもEthernetで豊富な実績を持つArista Networks製ネットワークスイッチに期待が寄せられた。

Arista Networks製品の強み

株式会社Preferred Networks
AIコンピューティング事業本部 基盤技術部
エンジニア 金井 瑛氏
拡大
株式会社Preferred Networks
AIコンピューティング事業本部 基盤技術部
エンジニア 金井 瑛氏

PFCIでは今回、PFCPのネットワーク基盤としてArista Networksのシャーシ型スイッチである7800R3シリーズを中核に、ボックス型スイッチ7050X3シリーズを組み合わせて構成した。PFCIと共に機器選定や環境構築に携わったPFNのAIコンピューティング事業本部 基盤技術部エンジニアの金井 瑛氏は、「できるだけ運用管理に掛かるコストを削減するニーズがあった」と語る。一般的なDCネットワークではボックススイッチを2、3階層に積み重ねるリーフ&スパインのアーキテクチャを採用することが多い。しかし、この構成では機器台数が増えるため、運用管理コストが高くなってしまうことが課題となる。PFCIでは、システムの設置場所のキャパシティが見えていたため、システムの最大規模をあらかじめサイジングし、その規模に対応できるシャーシ型スイッチを採用することで機器台数を最小化する方針とした。

PFCIではこれまでArista Networks製品の本格的な運用経験はなかったため、今回双日テックイノベーションのサービスを利用することでノウハウ面をカバーした。金井氏は「今まで触ったことのない機器を導入する形になりましたが、双日テックイノベーションさんから同等機能の検証機をお借りすることができ、検証や『事前の素振り』といったステップを積み上げることができました」と振り返る。

同じくエンジニアの阿波連 良尚氏は、「シャーシ型スイッチに搭載するモジュールの選定にあたっても、双日テックイノベーションさんの検証ラボをお借りして事前にテストをさせていただき、コスト効率に優れたモジュールの選択ができました。同社はAIネットワークに関する知見が豊富で、対外的な情報発信も積極的に行っていることから、安心して相談できると感じられました」と振り返る。

このほか、Arista Networksが提供する運用管理プラットフォーム「Arista CloudVision」も利便性が高いとの声が上がる。金井氏は「ネットワーク運用の現場では、なにか障害やトラブルが発生した際に、状況を詳しく調べるためのメトリック値などを担当者が判断し、そこから情報収集を開始するという手順が一般的で、監視が後追いになってしまうことがよくあります。CloudVisionでは、解析に必要となりうる情報があらかじめTelemetryで収集されているので、欲しいと思ったときにはすでに必要な情報が揃っている状況になっているのです」と語る。

加えて阿波連氏は「ライセンスモデルがシンプルなのも本当にありがたいところです。他社では極めて複雑な体系になっていて、必要な組み合わせを選ぶのも大変というところもありますし、結果的に高額になることが多いのですが、Arista Networksではスッキリしたモデルでコスト面でも割安なのでアドバンテージがあると思います。」と語る。

導入の効果

検証から納入まで手厚く支援

株式会社Preferred Networks
AIコンピューティング事業本部 基盤技術部
エンジニア 阿波連 良尚氏
拡大
株式会社Preferred Networks
AIコンピューティング事業本部 基盤技術部
エンジニア 阿波連 良尚氏

PFCPのネットワーク基盤においては、AIワークロードの処理性能を劣化させないことが極めて重要であり、実用に耐えうるかどうかの検証が重視された。その点においても、双日テックイノベーションのPier Oneラボ設備が大いに役立ったという。阿波連氏はPier Oneラボの環境について、「単に機器が置いてあるだけの場所を想像していましたが、実際には各種配線から負荷発生装置まで完璧に揃った環境をご用意いただけました。さらに外部からのリモートアクセス環境も整備いただけたので、毎回現地まで足を運ぶ必要もなく、スムーズに検証ができました」と振り返る。

AIワークロード処理においては、ネットワークにも大きな負荷が掛かることを想定し、パケットジェネレーターを使用したワイヤレートでの長時間負荷試験も実施した。こうした検証を入念に行えたのも、双日テックイノベーションのPier Oneラボがあったからだという。阿波連氏は一連のラボでの検証を振り返り、「各種パターンの検証を経て、これでもう自信を持って『いける』と言い切れるまでのテストをやらせていただきました」と強調する。また、「設定に関しても、双日テックイノベーションのエンジニアの方をアサインいただき、気になることは逐次ディスカッションできたので、とても安心感がありました」(阿波連氏)との声もあった。

検証完了後、機器選定・発注を経てデータセンターへ機器を納品する際にも、双日テックイノベーションの手厚いサポートが光ったという。金井氏は「単に製品を販売するだけではなく、きちんと使える状態で納品して頂けたのがとても助かりました」と語る。シャーシにモジュールを装着した状態で納入されたことに加え、納品前に双日テックイノベーション側でワイヤレート試験を実施し、入念に初期不良検査を実施。大型製品では時折、納品時に一部のパーツ故障が発生することも珍しくはないが、そうした不安も全くなかったと語る。

双日テックイノベーションの一連のサポートを振り返り、土井氏は「われわれは大きな会社ではないので、新しい技術や製品が出てきたときに、そのすべてを社内で検証することは難しいです。そうした中で、双日テックイノベーションさんのようなパートナー企業に支援して頂けるのは本当にありがたく、今後もそうした対応に期待しています」と締めくくる。

AIに関しては米国主導で技術開発が進む中、日本国内でも技術や運用ノウハウを積み上げていくことが重要だと指摘されている。PFNとPFCIによる独自AI半導体の開発やその演算能力のクラウドサービス化といった取り組みはこれからのAIを巡る国際競争のなかで日本の地位向上に大いに寄与することが期待される。

左から記載:
株式会社Preferred Computing Infrastructure 代表取締役社長 土井 裕介氏
株式会社Preferred Networks AIコンピューティング事業本部 基盤技術部 エンジニア 金井 瑛氏
株式会社Preferred Networks AIコンピューティング事業本部 基盤技術部 エンジニア 阿波連 良尚氏
双日テックイノベーション株式会社 ネットワークインテグレーション事業本部 事業推進部 村上 裕紀
同社 ネットワークインテグレーション事業本部 第一技術部 植田 翔貴
同社 ネットワークインテグレーション事業本部 第三営業部 中嶋 渉
拡大
左から記載:
株式会社Preferred Computing Infrastructure 代表取締役社長 土井 裕介氏
株式会社Preferred Networks AIコンピューティング事業本部 基盤技術部 エンジニア 金井 瑛氏
株式会社Preferred Networks AIコンピューティング事業本部 基盤技術部 エンジニア 阿波連 良尚氏
双日テックイノベーション株式会社 ネットワークインテグレーション事業本部 事業推進部 村上 裕紀
同社 ネットワークインテグレーション事業本部 第一技術部 植田 翔貴
同社 ネットワークインテグレーション事業本部 第三営業部 中嶋 渉