サマリー

物流企業に対する積極的なM&Aを繰り返し、国内外に数多くの拠点を抱えるSBSホールディングス。そのM&Aの効果を高めるためには、会社間のシステムを融合させるIT人材の確保が不可欠だ。そこで同社は双日テックイノベーションの運用アウトソーシングサービスである「NCPF」の採用を決定。人材不足と属人化を同時に解消し、IT環境整備のスピードアップを実現した。

課題・目的

  • M&Aなどの事業拡大により管理対象が増加。運用と保守を行うIT人材が不足
  • 少数の担当者で膨大な業務を回すことで、属人化の問題が発生
  • 人員補充も困難なまま、引き継ぎや教育にも支障

導入後の効果

  • 組織で運用を代行するアウトソーシングサービスで、さまざまなIT領域において100以上の運用を代行
  • NCPFが業務のリストアップからヒアリング、運用課題を排除してのマニュアル化。
  • 課題やニーズに合わせて柔軟に運用を整備し巻き取り、効率化とコスト抑制、属人化解消を実現
  • 属人化解消により、特定スキルを持たなくても多様な運用に対応。突発的な問い合わせにもすぐに応対可能に
  • 日々の運用を実施するNCPFが、精度や効率を改善しながらアップデートを継続

導入した商品・ソリューション

プロフィール

SBSホールディングス株式会社

企業名 SBSホールディングス株式会社
所在地 東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産新宿グランドタワー25階
設立 昭和62年12月16日
従業員数 26,316名(うち正社員10,315名、2025年12月末現在、連結)
URL https://www.sbs-group.co.jp/
事業内容 持株会社としてSBS グループ全体を統括し、総合物流(輸配送・保管等)、物流支援(人材・環境・マーケティング・IT 等)、不動産事業(物流施設開発・賃貸)を展開しています。
導入の経緯

成長を見据えたM&Aを通して、世界中の物流ニーズに応えていく

1987年に首都圏における即日配送サービスの立ち上げによって創業したSBSグループ。同社は「M&Aによる非連続的成長」と「緩やかな連帯による自律成長」という成長戦略のもと、物流を支える多種多様な企業をグループに加えつつ、それぞれの企業価値を高めることでビジネスの規模を拡大してきた。現在では国内外合わせて50を超えるグループ企業に加えて国内700以上、海外50以上の拠点を展開。物流業界全体をグローバルに支えている。

SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課長
兼 情報セキュリティ統括課長
千々木 宏一氏
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SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課長
兼 情報セキュリティ統括課長
千々木 宏一氏

そのビジョンについて、グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課長 兼 情報セキュリティ統括課長の千々木宏一氏は「ビジネスの成長とM&Aは切っても切れない関係。将来的な売上目標もM&Aがあって初めて達成できると考えています」と説明する。

千々木氏の所属するグループITインフラ統括部では、グループ全体のネットワークとサーバー、PCなどのデバイス、アプリケーションやITシステムの管理、およびサイバーセキュリティ対策の推進などを担当している。M&Aで集約したこともあり、管理しているサーバーだけでも500以上、PCは7000台に達しているという。

「M&Aの成功にはIT面での融合も不可欠です。新たにグループへ加わる企業とSBSグループ、両者のネットワークとITシステムを柔軟に融合させることも、私たちの重要なミッションです」(千々木氏)

しかしM&Aを繰り返したことでサーバーとPCの数が増加し、「運用管理の煩雑化が課題になっていました」と千々木氏は振り返る。

プロセス

人材不足の解消に不可欠な教育やノウハウ共有などの手間を、アウトソーシングで解消

中でも問題視されていたのが、深刻な人材不足だった。グループ各社のIT領域を効率的にサポートするためには、それぞれの業務内容や利用中のシステムに対する知見を持ったIT人材の確保が求められる。しかしそれを実現させるためには「さまざまな課題があった」と千々木氏は説明する。

「新しいシステムの導入時には1人から2人、IT人材のリソース確保が必要です。そうすると必然的に既存システムの保守は他のスタッフだけで回すことになります。こうした慢性化した人材不足の解消は長年の課題でしたが、簡単には人を増やせない状況でもありました。なぜならば新たな社員採用や派遣社員との契約をするとしても一からの教育が必要となり、負担は軽くありません」(千々木氏)

当時の課題について、グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課 プロフェッショナルの江守英昭氏は「人材不足による情シススタッフの属人化」を挙げた。

「複雑な運用ルールを理解しているのは担当者だけであり、問い合わせが来ても担当者不在時は即時の対応ができない場合がありました。また、新規プロジェクト立ち上げの際、予算を確保できてもリソースが確保できず、手が回らない場合もあったほどです。M&Aなどの事業戦略を加速するためにも人材不足、属人化は解決しなければいけない課題でした」(江守氏)

そのような中、2023年に双日テックイノベーションから提案されたのが運用アウトソーシングサービスの「NCPF」だった。これはグループITインフラ統括部が管理、運用しているITインフラやサービスの業務を双日テックイノベーションがヒアリングしてマニュアル化し、運用を代行するサービスだ。

SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課
プロフェッショナル
江守 英昭氏
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SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課
プロフェッショナル
江守 英昭氏

その提案を受けて江守氏は、「人材不足の問題が解消するだけでなく、人員と体制の安定化が見込めると考えました。業務内容のマニュアル化も行われるため、属人化の解消にもつながります」と当時の期待を振り返った。

「直近の人材不足に対して、中途採用を行うか派遣社員を雇うかの二択が迫られる中、会社組織として運用を代行してくれるNCPFは魅力的に映りました。まず私たちの中で引き継ぎや教育の手間がかからなくなります。さらにNCPFのチームで異動や退職があったとしてもマニュアルとして運用ルールが明確に残され、リソース確保や人材育成が担保されることも、将来にわたり長く運用していくことを考えると安心材料でした」(千々木氏)

そのマニュアルはSBSホールディングスにも残されるので、万が一NCPFのサービスを止めたとしてもナレッジを維持できる。

NCPF採用の判断は速かった。2023年12月には要件定義を行い、2024年1〜3月に運用設計、2024年4月にはNCPFが稼働している。

マニュアル製作時のヒアリングから運用まで、ワンストップで対応

NCPF導入において、もっとも時間をかけたのが双日テックイノベーションによるヒアリングだった。その目的は、課題やニーズに合わせて運用を整備し巻き取ることだ。そのためにNCPFはヒアリングの実行体制や資料を整えた。

江守氏は「属人化していた業務をマニュアル化する場合、本来は私たちで業務内容を整理し、説明するのが筋です。しかし当時は人材不足もあり、その手間と時間をかける余裕がなかったのです」と説明する。

ヒアリングの難しさについて、グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課 エキスパートの羽石健太氏は「仮想サーバーの構築ひとつとっても、データセンターやサーバーごとに命名規則や構築ルールに差異があります。それぞれのルールをまとめようにも分岐点がいくつもあるため、非常に複雑で困難でした」と語った。

その点、双日テックイノベーションの専任サービスマネージャーが担当者へヒアリングし、複雑な運用ルールのマニュアルを作成するNCPFはうってつけのサービスだった。その内容について千々木氏は「以前は特定の担当者しか把握していない運用ルールがありましたが、担当者が自分でマニュアルを作ろうとしても、必ず抜け漏れが生じるでしょう。しかしNCPFがマニュアルという形に抜け漏れなく整理してくれたことでノウハウの共有と実態の把握が容易になりました。これは属人化を防ぐことにもつながっていると感じています」と評価する。

そのうえで江守氏は、「契約の柔軟さも魅力の一つ」と説明した。NCPFの契約は3カ月単位であり、サービス内容に不満を感じたとしても短期間で打ち切れる。また、契約した人員が足りない、あるいは過剰だったときも契約延長の際に増減が可能だ。そのため江守氏は「短いスパンで調整できるプロジェクトなので、まずは使ってみようと考えました」と当時の考えを語った。

選定時には、ワンストップ対応のサービスである点を評価する声も上がったという。NCPFは構築だけでなく、ユーザーからの問い合わせや障害対応などの保守サポートまでをワンストップで提供している。

SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課
エキスパート
羽石 健太氏
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SBSホールディングス株式会社
グループITインフラ統括部ITインフラ戦略課
エキスパート
羽石 健太氏

「双日テックイノベーションにはデータセンター内のネットワークの製品保守、仮想基盤の運用などを対応してもらっていました。それにNCPFが加わったことで窓口が一本化され、万が一の不具合発生時にも対応判断がスムーズになりました。実際に問い合わせをしたときにはシステムやサービス、ネットワークを俯瞰的に見たうえで具体的な対応策を提案してくれるので助かっています」(江守氏)

ネットワークを更改した際には、既存の監視ツールを継続利用することで追加コスト発生を抑えて監視基盤を構築したケースもあった。この提案、構築にもNCPFは関わっていた。

「運用マニュアルに関しても、最初に完璧なものが完成するわけではありません。ヒアリングで間違った説明をすることもあり、運用開始してから修正することもありました。しかしNCPFは不足点や課題の一つひとつを巻き取ったうえでマニュアルを加筆修正して適切な対応をとってくれます。100%完成していなくても運用をスタートできる点は、非常にありがたく感じています」(江守氏)

導入の効果

専任サービスマネージャーとSE支援サービスとの連携

仮想環境の構築やVPNユーザーのアカウント登録といった定型業務の多くはNCPFへのアウトソーシングが可能だ。そのため、事業の成長にあわせて依頼する範囲も広がっている。

また双日テックイノベーションは、サービス開始後も運用ルールの見直しを継続的に行っている。稼働中のシステムであっても、外部要因によって変更を迫られるケースは少なくない。システム更新時に運用方法が大きく変わることもある。

そうした状況に備えて、双日テックイノベーションはマニュアルどおりに運用するだけでなく、簡略化できる要素を見つけ出し、順番を変えたり作業工程を整理したりする提案も行っている。さらには月に一度定例会を開き、前月の問い合わせ内容を踏まえてサービス内容や品質の向上に向けて議論している。

また、同時に利用していた双日テックイノベーションのSE支援サービスもNCPFと相乗効果を生んでいる。

「SE支援サービスは、当社の社員と同じような働きをしながら、システム開発における上流工程を担当し、新しいシステム、サービスを一緒に導入するような業務を担います。優れていると感じるのは、双日テックイノベーションの商社ならではの情報収集力と提案力。常に新しい情報を探し、独自の知見やノウハウを交えて紹介してくれるのです。当然、そこから新しいシステムの導入検討に移ることもあります。

特に最近では、セキュリティ対策の重要性が浸透してきました。しかし一口にセキュリティと言っても、その領域は非常に広いもの。その点、エンドポイント対策からBCP対策まで、双日テックイノベーションの知見と情報収集力を共有してくれるサービスはありがたい存在と言えます」(千々木氏)

SE支援サービスのスタッフが自分の担当している業務を進める際に「この運用はアウトソーシングできるのではないか?」「この運用を効率化できないか?」と思いつくことがある。そのときにNCPFの専任サービスマネージャーを交えて議論が始まることもあった。このような深いコミュニケーションはさらなる運用の高度化につながっていった。

「SE支援サービスとNCPF、そして営業による連携体制が結ばれていますので、何か問題や改善点があった場合には自動的に巻き取ってくれます。その中ではネットワークの設定変更など、定型業務では回せないような対応も協議されているのだろうと感じています」(江守氏)

運用負荷を軽減できた時間を情シス本来の業務に注力

現在、月間120時間分の運用をNCPFに依頼している。それは依頼前には多くの工数を要していた業務だ。NCPFによって運用を効率化し、アウトソーシングを組み合わせたことで、従来と比べて大幅に短時間で対応できている。

また以前は、突発的な問い合わせがあっても担当者が不在で対応が後回しになるケースもあったが、属人化が解消され業務も標準化された結果、複数人で対応できるようになった。

NCPF利用の効果として羽石氏は、「情シスがコア業務に注力できる体制ができたこと」を挙げる。グループITインフラ統括部としては、以前から新しいITシステムやサービスの導入、またM&AのためのITシステム融合などに注力したいと考えていたが、人材不足により手が回らない状況にあった。現在では効果的なアウトソーシングによって運用負荷の軽減に成功したことで、ビジネスの成長につながるプロジェクトに注力できる体制が構築されたという。

江守氏は「システム導入のスピードがアップしました。これまで10個のプロジェクトを実施したいと考えていても、5〜6個しかできなかったのです。ところが今では10個、うまくいったら11個、12個と進められるようになりました」と成果を述べた。

「NCPFを採用したことで、定型業務にマンパワーを割かずに済んでいます。また業務の棚卸しが済み、属人化も解消したため、新しいシステムの導入や更新作業だけでなく、人材育成などの対応も容易になるだろうと期待しています」(千々木氏)

さらなるM&A拡大に向けてNCPFに期待。商社の強みを活かし海外での展開も視野に

NCPFの導入を経て、羽石氏は「いまもまだ属人化している運用業務が残っていると思います。それらを改めて整理し、依頼できるものは任せて、私たち本来のプロジェクトに専念できるのが理想的な形なので、それに近づけていきたいと私たちも努力したいと考えています」と語る。

また千々木氏は、「これから先のM&Aのためにも、NCPFの支援が必要になるはず」と述べる。「M&Aで仲間になった会社の中には、IT部隊を有していないケースもあります。そうなると、サポートと運用の負担も増していくでしょう。今後もNCPFに依頼していく業務は増えると思います」と予測している。

さらに期待しているのが、海外のM&Aにおける支援だ。

「近年では海外のM&Aも増えてきていました。将来的には英語ベースのヘルプデスクのようなサービスも、NCPFで対応できれば、また新たな道が開けてくると期待しています」(千々木氏)

それを実現させるためには、現地の言語理解だけでなく、その国の文化、その業務内容を理解する必要がある。その点、数多くの海外拠点を抱える総合商社系SIerである双日グループには、「独自の知見を活かした支援に期待している」と総括した。