建材・建築・土木分野で用いられるコンクリートやモルタルなどの建材の試験、認証、評価を担う建材試験センターでは、2023年に試験の申し込みから試験結果報告書の受領までをオンラインで完結できる工事材料試験基幹システム「CON-PAS」を稼働させた。
紙の申請書による手続きからオンライン申請へ移行したことで、事務負担の軽減を実現した一方、システム操作に不慣れな利用者からの問い合わせが増加するという新たな課題が生じていた。
この課題を解決するため、既存システムを改修することなく利用者の操作を支援できる、双日テックイノベーションのCX改善プラットフォーム「UX Canvas」を導入した。利用者の自己解決を促し、問い合わせ対応の負担軽減を目指している。
課題・目的
- CON-PAS導入後、システムの操作に不慣れな利用者からの問い合わせが増加し、対応負荷が高まっていた
- システム上の案内や表示内容を改善するには開発元への依頼が必要で、軽微な修正であっても迅速に反映することが難しかった
導入後の効果
- ポップアップによるガイドやナビゲーションなどをCON-PASの画面上に追加することで問い合わせが減少。サポート業務の負荷軽減に寄与
- 開発元に依頼することなくガイドの内容を編集できるようになり、案内や告知をタイムリーに反映可能に
一般財団法人建材試験センター 工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課 佐々木 可奈子氏(写真左)
一般財団法人建材試験センター 工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課 主幹 若林 和義氏(写真右)
| 企業名 | 一般財団法人建材試験センター様 |
| 所在地 | 東京都中央区日本橋堀留町1-10-15 JL日本橋ビル |
| 設立 | 1963年8月15日 |
| 従業員数 | 200名 (2026年4月現在) |
| URL | https://www.jtccm.or.jp/ |
| 事業内容 | 一般財団法人建材試験センターは、建材ならびに建築・土木分野における第三者試験・認証機関として、建築材料や設備機器、構造物などの品質・性能に関する試験、評価、認証業務を幅広く展開している。コンクリートや鋼材などの工事用材料試験をはじめ、製品認証、性能評価、ISO認証、校正業務、調査研究、標準化活動などを通じて、建設分野の品質向上と安全・安心な社会基盤整備に貢献。独立性・公正性を強みとし、建設産業の発展と国民生活の向上を支える役割を担っている。 |
1963年に発足した建材試験センターは、建材・建築・土木分野で用いられる建材などの試験、認証、評価を通して、さまざまな構造物の品質と安全性を担保してきた。企画管理課 主幹の若林和義氏は、「当センターの目的は、建設系の第三者証明事業を通じて、住生活向上と社会基盤整備に貢献すること」と説明する。
試験を利用するのは主に、コンクリート採取試験会社や生コン工場、建設会社である。試験体をセンターに持ち込むか送付したうえで、紙の申請書に必要事項を記入し、試験の実施を経て最終的な報告書を受け取るという流れだ。
このプロセスを効率化するために、2023年、同センターは試験の申し込みから試験結果報告書の受領までをオンラインで完結できる新基幹システム「CON-PAS(コンパス)」を稼働させた。紙ベースだった従来の運用から移行し、センター窓口の端末に加え、利用企業のPCからもオンラインで手続きできるようになった。
「従来は紙の申請書による運用だったため、帳票類の電子化を進めることを目的としてCON-PASを導入しました。利用者自身が申し込みや状況確認を行える環境を整備することで、データ入力などの業務効率化を図ることを目指しました」(若林氏)
従来の運用では、申請者が記載した依頼書の内容をスタッフが基幹システムに手入力し、内容の確認を行っていた。しかし、CON-PASの稼働により、利用者自身が入力した内容をもとに試験を進める運用へと移行。受付業務や報告書発行など、業務の多くを占めていた事務作業の負担は大きく軽減されたという。
CON-PASの利用者は2,000社以上、約2,600アカウントに達し、年間の申し込み件数は約12万件にのぼる。一方で、導入後には操作に不慣れな利用者からの問い合わせが増加し、新たな対応負荷が生じていた。
その多くは、「どこから申し込みを始めればよいか」「どの項目を入力すればよいか」「報告書はどこで確認できるのか」といった基本的な操作に関するものだった。
「導入当初は、使い方に関する問い合わせが事業所全体で1日50~60件程度あったと思います。その対応に一件当たり30分程度かかることもありました」(若林氏)
ユーザー向けのマニュアルも整備していたが、100ページ近いボリュームがあり、必要な情報をすぐに見つけることは容易ではなかった。そのため、マニュアルを確認するよりも窓口に問い合わせた方が早いと考える利用者がいたことも、問い合わせ増加の一因となっていた。
企画管理課の佐々木可奈子氏は、当時の対応について次のように振り返る。
「来社した利用者の方には、スタッフがパソコンのそばで、一つひとつ操作を案内することもありました。『ここを押してください』、『次はこちらです』と順を追って説明するほか、CON-PASのアカウント情報の確認からサポートするケースもありました」(佐々木氏)
電話での問い合わせでは、利用者がどの画面を見ているのかを確認しながら案内する必要があり、状況の把握に時間を要することもあった。また、必須項目の未入力によって、申し込みを完了できないといったケースでも、電話越しでは画面の状態を確認できないため、原因の特定や案内に時間がかかり、担当者の負担となっていた。
各試験室の事務職員は1~2名程度と限られており、問い合わせが重なる時間帯には、本来試験業務を担う技術職員が電話対応を行うこともあったという。
「効率化を実現するには、システムを導入するだけでなく、お客様に定着しやすい運用を整えることも重要だと実感しました」(若林氏)

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- 一般財団法人建材試験センター
工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課 主幹
若林 和義氏
本課題の解決に向け、同センターが導入したのが、双日テックイノベーションのCX改善プラットフォーム「UX Canvas」だ。
「UX Canvas」は、既存システムの画面上にヒントやナビゲーションなどを表示し、利用者の操作を支援するツールである。入力欄の近くにヒントを表示したり、入力ミスがあった際に原因や修正方法を案内することで、利用者の自己解決を促すことができる。
「『UX Canvas』で特に魅力を感じたのは、既存システムを大きく改修する必要がないことでした。また、改善したい箇所から段階的に取り組める点や、現場主体でガイド内容を見直せる点も導入を検討するうえでのポイントになりました」(若林氏)
従来、システム上の案内や告知を変更する際には開発元への依頼が必要で、反映できるタイミングも限られていた。「UX Canvas」では、現場側でガイドや告知の内容を編集できるため、必要に応じて迅速に改善を反映できる点も評価された。
「以前は、ヒントやガイド、告知などを掲載したくても、システムのメンテナンスに合わせて対応する必要がありました。
一方、『UX Canvas』では、必要なタイミングで内容を追加・修正できます。掲載した案内について、より分かりやすい表現に変更したい場合にもすぐ対応できますし、特定の項目に関連する問い合わせが増えた際には、その箇所に案内を追加するといった対応も可能になりました」(佐々木氏)
「UX Canvas」の導入検討は2025年12月に始まり、2026年2月からPoCに着手した。PoCについて若林氏は、「実際に『UX Canvas』に触れながら、ヒントやナビゲーションといった機能を試し、さまざまな活用方法を検討できました」と振り返る。
その後、2026年3月に双日テックイノベーションとの契約を締結し、翌4月には本番稼働を開始した。短期間で本番稼働に至った理由の一つとして、佐々木氏は導入作業の負担が少なかったことを挙げる。
「ブラウザに拡張機能を追加することで利用を開始できるため、特別な準備は必要ありませんでした。導入作業自体も短期間で完了し、『UX Canvas』のバージョンアップも自動で行われるため、運用面での負担も少ないと感じています」(佐々木氏)
導入にあたっては、「UX Canvas」のカスタマーサクセスを担当する石川が、同センターの業務内容や実際の問い合わせ内容を踏まえながら、ガイドの設計や活用方法の検討を支援した。若林氏は、こうした業務理解に基づく伴走支援を高く評価している。
「100ページ近い既存のマニュアルを読み込み、当センターの業務を深く理解したうえで、『UX Canvas』の活用方法を提案いただきました。実際の問い合わせ内容も踏まえ、第三者の視点からアドバイスをいただけたことで、利用者がより使いやすい環境を整えるための改善にもつながったと感じています」(若林氏)
導入後は、利用者から寄せられる声や問い合わせ内容を踏まえながら、画面上の案内を継続的に改善している。
例えば、従来のCON-PASの画面には掲載されていなかった試験体の送付先や連絡先、受付時間などの情報を、「UX Canvas」を活用して利用者の目に留まりやすい形で表現している。

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- 受付時間やメンテナンス日時などの重要情報を画面上で目立たせ、見落としを防止
「 『UX Canvas』の導入後は、利用者の方に確実に確認していただきたい案内を、必要な画面上で目立たせて表示できるようになりました。以前から、告知事項はトップ画面のお知らせ欄に掲載していましたが、見落とされることもありました。現在は、関連する画面上に案内を表示することで、必要な情報を確認しやすくしています」(佐々木氏)
また、問い合わせの多い操作については、利用者が迷いやすい箇所に、選択内容や次の操作を案内するガイドを表示している。
例えば、試験の申請時には最初に試験材料を選択する必要があり、選択した試験材料によってその後の入力項目や操作手順が一部異なる。
そのため、試験材料を選択する段階で適切な案内を表示するとともに、選択した内容に応じて必要な操作を案内することで、利用者が迷わず手続きを進められるよう支援している。

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- 申込内容に応じて必要な操作を案内し、迷わず申請できるよう支援

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- 一般財団法人建材試験センター
工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課
佐々木 可奈子氏
「UX Canvas」を活用している画面では、基本的な操作に関する問い合わせが減少傾向にあり、若林氏、佐々木氏ともに導入効果を実感している。
佐々木氏が特に効果を感じているのは、CON-PASの新規利用者への案内だという。
「CON-PASを初めて利用する方から電話でお問い合わせをいただいた際には、オンラインで試験の申請ができることをご説明したうえで、その後の操作については『画面上に使い方のガイドがあります』とご案内できるようになりました」(佐々木氏)
また、ガイドやバナーを現場のスタッフ自身で作成・更新できるようになったことで、利用者への案内を現場主体で改善できるようになっている。
「バナーなども自分たちで自由に作れるので、担当のスタッフも楽しみながら取り組んでくれています」(若林氏)
現在は、コンクリート試験やモルタル試験などの既存試験メニューを対象に、段階的にガイドを設置しながら「UX Canvas」を運用している。今後、新たな試験メニューを追加する際には、あらかじめ必要なガイドや案内を整備したうえで運用を開始し、その効果をより具体的に把握していく方針だ。
「今後、試験メニューを拡大していく中でも、『UX Canvas』によるガイドや案内を活用しながら、お客様と当センター職員の双方の負担軽減につなげていきたいと考えています。システムは導入するだけでなく、お客様が迷わず操作でき、職員にとっても運用しやすい環境を整えることが重要です。よりわかりやすく使いやすい環境を整えながら、継続的に改善していきたいと考えています」(若林氏)
建材試験センターは、全国に複数の事業所があり、認証事業などで別の基幹システムを運用する部署もある。若林氏は、「今回『UX Canvas』の導入を通じて得られたノウハウは、全社的にもナレッジとして共有していきたいと考えています」と今後の展望を語る。既存システムを大きく改修することなく利用者の操作を支援できる「UX Canvas」について、今後さらなる活用範囲の拡大が期待される。

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- 写真左より
一般財団法人建材試験センター 工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課 佐々木 可奈子氏
一般財団法人建材試験センター 工事材料試験ユニット 工事材料試験所 企画管理課 主幹 若林 和義氏
※所属部署名、役職名は、取材当時のものです。