
エンジニアブログ サーバー市場の王者 HPEが提供する次世代ネットワークソリューションとは
皆さん、「HP(ヒューレット・パッカード)」と聞いて思い浮かべるのは、プリンタやPC、オンプレミスのサーバーメーカーかと思います。
しかし、それはもはや過去のイメージかもしれません。クラウド時代の到来により、HPEはクラウドやネットワークの分野に力を入れています。
本記事では、HPEがクラウドやネットワークに取り組む背景や、世界初 AMD Pensando DPUを搭載した分散サービススイッチ
「HPE Aruba Networking CX10000」について紹介します。また、今年6月に予定されている"Interop Tokyo 2025"への登壇情報もぜひご注目ください。

吉田 健一郎
ネットワーク・クラウド製品のプリセールスエンジニア。AWS12冠取得に向けて勉強中
1. HPEとは?
まずは、「HP」と「HPE」の違いについて簡単に説明します。
HP(ヒューレット・パッカード )は、2015年11月に事業を分社化し、2つの独立した会社に分かれました。
- HP Inc. : 主にPCやプリンターなどのコンシューマー向け製品を担当
- HPE(ヒューレット・パッカード エンタープライズ): サーバー、ストレージ、ネットワーク、クラウドソリューションなど、企業向けのITインフラ事業を担当
この分社化の背景には、B2B(企業向け)とB2C(消費者向け)の市場ニーズが異なるため、それぞれの事業に特化することで、迅速な意思決定と市場対応を可能にする狙いがありました。HPEは特にハイブリッドクラウド、データセンターソリューションに注力し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する役割を担っています。なお、本ブログで紹介するAruba Networkingは、HPEが提供するネットワークのブランド名となります。
2. HPEがクラウドとネットワークに取り組む理由
2-1.クラウド化の波
ヒューレット・パッカードは、かつてサーバー市場の王者として君臨していました。
しかし、クラウド化の波が押し寄せ、一般企業ではSaaS/IaaSの利用が増加し、オンプレミス中心のITインフラの需要は減少。HPEは進化しなければ生き残れない状況に直面しました。この危機を乗り越えるため、クラウドとネットワークへのシフトを開始しました。
2-2.クラウド基盤サービス:GreenLake
AWSやAzureなどのパブリッククラウドが台頭する中で、HPEはGreenLakeというプライベートクラウドを開発しました。
GreenLakeは、従量課金モデルやハイブリッドクラウドの柔軟性を提供し、顧客にとってコスト効率の高い選択肢を示します。同時に、データの管理やセキュリティ面でもオンプレミスの利点を生かしながら、パブリッククラウドとの差別化に成功しています。つまり、これまでHPEのライバルと言えば Dellなどのサーバーメーカーでしたが、これからはAWSやAzureがライバルであり、これらと連携する「オンプレとクラウドの橋渡し」という役割も果たしています。
2-3.クラウド基盤にはネットワークが不可欠
クラウド基盤を提供するためには、サーバーやストレージだけでなく、広範囲をカバーするネットワークが不可欠です。HPEは元々、3ComやProCurveといったネットワーク機器を持っていましたが、これらは主にアクセス層でサーバー・ストレージをつなぐ用途でした。そこで、コア層、拠点間接続など、ネットワークを幅広くカバーするために多くの企業を買収し、ネットワーク製品のポートフォリオを強化してきました。
2-4.クラウド基盤のパーツ集め:Aruba、Silver Peak、AI、SASE
たとえば、2015年に買収したAruba Networksは、無線LANソリューションを加え、ネットワーク市場での存在感を飛躍的に高めました。また、2020年にはSilver Peakを買収し、SD-WANソリューションを統合することで、ネットワークの柔軟性と効率を向上させています。さらに、クラウド基盤を制御するソフトウェアや、AI、SASE/CASB製品の買収も進めました。
<ネットワーキングおよびセキュリティ関連>
Aruba Networks(2015年): エンタープライズ向けWi-Fi
Silver Peak(2020年): SD-WAN
Axis Security(2021年): SASE/CASB
<クラウドおよびソフトウェア関連>
Cloud Cruiser(2017年): 使用量の計測や管理技術
CTP (Cloud Technology Partners)(2017年): クラウド移行や戦略的コンサルティング
OpsRamp(2023年): IT運用管理(ITOM)
Morpheus Data(2024年): ハイブリッドクラウド管理プラットフォーム
これらの買収は、単なる規模拡大ではなく、クラウドと次世代ネットワークを見据えた明確な意図のもとに進められています。
参考URL:「これで製品ポートフォリオは整った」HPE Arubaの変貌と次に目指すもの - 出典元:ASCII.jp×TECH
3. HPEネットワーク製品ラインナップ
このような経緯からHPEはネットワークに力を入れてきました。その結果、HPEはArubaを中心にデータセンターやエンタープライズ向けのネットワーク製品を次々と進化させています。主なネットワーク製品をご紹介します。
3-1.CX10000スイッチシリーズ(世界初!分散サービススイッチ)
データセンターの効率化とセキュリティを劇的に向上させる、世界初の分散サービススイッチ CX10000 が注目されています。
背景として、データセンターが抱える以下の課題があります。
課題1:VMwareESXiからの移行と新たなマイクロセグメンテーションの必要性
VMware社の買収に伴うライセンス価格の大幅な上昇によって、多くの企業がNutanixやHyper-Vなど他のハイパーバイザへの移行を検討し始めています。それに伴い、これまでVMwareNSXで実現してきたマイクロセグメンテーションを新たな環境でどのように実現するかが課題となっています。マイクロセグメンテーションの対策をしていなかった企業においても、昨年発生した国内のランサムウェアの被害事例などを見て、対策を検討するケースが増えています。
課題2:仮想マシン間の通信効率の悪さ
専用のIPsec、NAT、ファイアウォールを経由する「ヘアピン通信」が発生し、通信効率の低下を招いています。
課題3:ソフトウェア処理によるパフォーマンス低下
VMwareNSXのソフトウェア処理によるパフォーマンスが低下が問題となる場合があります。
課題4:マイクロセグメンテーションの構築・管理の煩雑さ
マイクロセグメンテーションは構築の手間や管理の煩雑さから、導入ハードルはやや高めでした。
CX10000スイッチシリーズによる解決策
CX10000では、IPsec、NAT、ファイアウォールといったセキュリティ機能をスイッチ自体に搭載し、サーバーに近い場所でこれらの処理を完結させることが可能になります。VMwareNSXにも「分散ファイアウォール」という仕組みがありますが、同じように集中型のアプライアンスで処理させるのではなく、ネットワーク全体に「分散」させます。VMwareNSXのようにコンポネントをデプロイする必要は無いため、導入や管理は比較的容易です。さらに、AMD Pensando™のハードウェア高速化サービスプロセッサーを使用し、分散ファイアウォールをハードウェア処理で実現します。これにより、シンプルで高度なセキュリティと高いパフォーマンスを両立したネットワーク環境を実現します。

3-2.CX8000/CX6000スイッチシリーズ(DC・エンタープライズ向けスイッチ)
データセンター(DC)、エンタープライズ向けスイッチの幅広いモデルが揃っています。
●CX8000スイッチシリーズ
データセンターのTOR(Top of Rack)およびコア層向けのスイッチです。ファイアウォール付きTORの場合はCX10000スイッチシリーズを選択します。
●CX6000スイッチシリーズ
エンタープライズ/キャンパス向けにコア層からアクセス層まで幅広く対応するスイッチです。
CXシリーズは次の冗長構成に対応しています。VSX/VSFどちらに対応しているかはシリーズによって異なります。
VSX(Virtual Switching Extension) ・・MC-LAG (マルチシャーシLAG)構成
VSF(Virtual Switching Framework) ・・スタック構成

3-3.Aruba Central、Pensando PSM、Aruba Fabric Composer (AFC)(可視化・管理ツール)
●Aruba Central
Aruba Centralは、ネットワーク管理をクラウドで簡単にするツールです。これを使えば、Wi-Fiやスイッチ、SD-WAN、セキュリティなどを一つの画面で管理できます。ネットワークの状態をチェックしたり、問題が起きたときにすぐに対応できるのがポイントです。さらに、AIがネットワークの最適化や問題の予測を手助けしてくれるので、IT担当者は楽にネットワークを運用できます。近日利用できる New Central 画面には「ネットワーク・タイムトラベル」という機能があり、特定時点でのスナップショットから過去に遡った調査が可能です。Aruba Centralは現在、HPE GreenLakeのサービスカタログの一部として提供されており、今後、あらゆるITリソースがGreenLakeに統合される方向に向かっています。

●Pensando PSM
先ほどご紹介した CX10000スイッチシリーズ向けのセキュリティ管理プラットフォームです。GUIでマイクロセグメンテーションの状態を可視化し、柔軟なセキュリティポリシー定義、ステートフルNAT、次世代ファイアウォール機能を提供し、ゼロトラストセキュリティの基盤となるマイクロセグメンテーション環境を容易に実現できます。例えば、どの仮想マシンがどの仮想マシンと通信しているかについて、以下の画面のように、IP/Port/Protocol、通信の方向、許可(緑)/拒否状態(オレンジ)、時間の経過に伴う接続の変化などを一目で把握することができます。

●Aruba Fabric Composer (AFC)
ネットワーク運用・Config自動化ツールです。データセンター内のネットワークファブリックの構築、設定、運用、管理を一元的に自動化することを目的としています。これまで、手作業で行っていた煩雑な設定作業や、複数のスイッチに個別にコマンドを入力する手間から解放され、より迅速かつ正確なネットワーク運用が可能になります。例えば、データセンター内のCXスイッチでスパイン-リーフ構成とする場合、VXLANやEVPNなどの複雑な設定が必要になりますが、AFCのGUI上でいくつかの値を指定するだけでアンダーレイおよびオーバーレイのConfigを自動設定してくれます。VMware ESXi や Nutanix AHV 等のハイパーバイザ環境の可視化にも対応しています。
これらの可視化・管理ツールはAPIによって連携可能ですので、組み合わせることでネットワーク管理とセキュリティの効率化を実現することができます。
4. HPEネットワークの強み
競合ひしめくDC・エンタープライズ市場において、HPEのネットワークには以下のような強みがあります。
4-1.サーバー、ストレージ、ネットワークを1社で統一できる
HPEのネットワーク機器を利用する上での強みとしてサーバー、ストレージ、ネットワーク、ハイパーバイザ、プライベートクラウドなどを1社で統一できる点があります。これには以下の利点があります。
- シンプルな管理: オールHPE製品を使用することで、異なるベンダーのプロトコルの違いを気にする必要がなくなります。
- コスト削減: 異なるベンダーからハードウェアを調達する際に発生する追加の設定やサポートコストを削減できます。
- パフォーマンスの最適化: HP製品間の互換性が高いため、ハードウェアのパフォーマンスを最大限に引き出しやすく、システム全体の効率が向上します。
- サポートの効率化: 1社からの導入となるため、故障やトラブルシューティングを行う際に、単一のサポート窓口になります。
- 統合性: サーバー、ストレージ、ネットワーク機器が統合されることで、データの転送速度が向上し、全体のシステム性能も高まります。
4-2.低コスト
価格やサポート面はエンタープライズでは重要です。CXシリーズは競合と価格を比較すると安価です。BGPやOSPFなどのL3機能やVXLANなどの機能が標準ライセンス(無償)で使えるため、コストパフォーマンスに優れています。また近年では、ネットワーク機器においてもサブスクモデルのライセンスを採用するケースが増えていますが、CXシリーズは買い切りで購入できるなどシンプルな点が好評です。
4-3.Ciscoライクなコマンドライン
CXシリーズはCiscoライクなコマンドラインを採用しているため、リプレースのハードルが低く、既存のネットワーク管理者にとって使いやすいです。
4-4.クラウド基盤でも豊富な実績
GreenLakeのデータセンターのような高品質・低遅延が要求される環境でも豊富な実績があり、その技術はエンタープライズネットワークにも活かされています。
4-5.AI・可視化・自動化による次世代ネットワーク
HPEは、今後あらゆるITリソースをGreenLake上で統合管理し、AIによる自動化で運用を効率化、オンプレミスからクラウドまでを統合的に可視化できる、次世代ネットワークの実現に力を入れています。
これらの詳細は今後のブログで詳しく解説していきます。
5. Interop Tokyo 2025 で最新技術をご紹介!
この記事でご紹介したHPEの技術革新や挑戦の詳細について、今年6月に開催される Interop Tokyo 2025 内の併設イベント 「Data Center Summit」で直接触れていただけます!イベントでは、HPEの最新のネットワークソリューションや CX10000 の魅力を分かりやすく解説し、未来のITインフラの可能性をお届けします。さらに、HPE社との共同での登壇セッションでは実際のユースケースや成功事例を交えながら、HPEの新たな挑戦を共有する予定です。ぜひお楽しみください!
【登壇セッション】
HPE Aruba Networking CX10000で変革するネットワークセキュリティ: マイクロセグメンテーションの新時代 (仮)- 出典元:Data Center Summit
【日時/場所】
6月12日 (木) 14:15-14:55 展示会場内RoomE
6. まとめ:HPE×STech I - ITインフラの未来における選択肢
HPEのクラウドやネットワークへの取り組みについてご紹介しました。
HPEのクラウド&ネットワーク分野への挑戦は、単なる市場対応策ではなく、未来を見据えた革新的な選択肢を示しています。クラウド全盛の時代において、オンプレミスの価値を再定義し、ハイブリッドモデルを普及させるHPEの取り組みは、顧客に新たな選択肢を提供し続けています。オンプレミス、クラウド、そしてハイブリッドと、選択できる未来の形を考えてみてはいかがでしょうか?
弊社STech I(双日テックイノベーション)はHPEの黎明期から技術革新を共に歩み、サーバー、ストレージ、ネットワーク、クラウドまで深い知見を蓄積しています。CX10000の検証に国内代理店でいち早く取り組み、多くの展示会出展や HPEとの共同セミナーを実施してきました。GreenLakeでの豊富な実績が示す高い技術力で、Aruba CXシリーズの性能を最大限に引き出し、経験と最新技術でお客様のネットワーク課題を解決します。
双日テックイノベーションとHPE - リレーションシップの歴史
今回ご紹介したネットワーク製品である Aruba CXシリーズについて、さらに詳しく知りたいお客様には、打ち合わせでの詳細な説明も可能ですので、ぜひお問い合わせください。御見積や製品カタログなどのご要望についても、以下の「お問い合わせ」ボタンよりお問い合わせください!
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