エンジニアブログ 【第1回Agentic AI現場録】 「ただ答える」から「自律して動く」へ――Agentic AIが変えるエンタープライズ業務のあたりまえ

本記事は、新設部署のインフラ出身エンジニアと新人エンジニアのチームによる、現場での知見習得の記録として執筆しています。Agentic AIにまつわる周辺キーワードの解説から実際の構築環境・検証結果の紹介まで、導入前提を一つずつ確かめながら進めた足跡を共有します。

本シリーズは全5回:
 第1回_そもそもAgentic AIとは何なのか
 第2回_MCPがなぜポイントになるのか
 第3回_Agentic AI検証環境を作ってみた
 第4回_検証環境の評価をしてみた
 第5回_手を動かして見えてきた、導入までに考慮が必要なこと
をお届け予定です!

谷地 陽奈

Juniper製品のプリSE、テックマーケを経て、現在はAI・自動化チームで活動中。
G検定とPythonとネットワーク自動化基礎検定 取得しました!

1. 「Agentic AI」への注目の高まり

2022年にChatGPTが登場して以来、私たちの“AIとの距離感は目に見えて縮まりました。検索の代わりに質問し、文章を整え、会議の議事録をまとめる。こうした「答えてくれるAI」は、もはや当たり前の道具になりつつあります。

では、次のフェーズは何か――それが「自律して動くAIAgentic AIです。

Agentic AIは、単なる指示待ちAI”から進化し、目的に合わせて計画を立て、必要な情報を取得し、タスクを遂行する主体性を持ったAIを意味します。

この新しい潮流に対して、現場の期待はシンプルです。もしAIが自律的に計画を立て、社内システムや外部サービスと安全に連携し、業務を実行できたら――企業のオペレーションはどう変わるでしょう?

イメージしてみてください、人間が指示を出すたびに手作業で補助しなくても、AIが目的に合わせて段取りを立て、許可されたデータ範囲/操作権限の中で、成果物の素案まで自動生成してくれる。まさしく「仕事の相棒」としてのAIエージェントです。

そしてさらにイメージしながら読み進めてほしいのは、次の1点。

「あなたのAIは同僚?上司? どのような立ち位置、権限で一緒に動く相棒が欲しいですか?」

2. そもそもAgentic AIとは?従来の生成AIチャットとは何が違うのか

本記事での定義:目的志向で自律的にタスクを遂行するAI

Agentic AIとは、与えられた目的を理解し、自律的にタスクを分解し、必要な情報を自ら取得し、手順を実行して結果を出すAIを指します。単に質問に答えるだけではなく、「達成すべきゴール」から逆算して動けるのが特徴です。

従来型との違いをビジネスインパクトで理解していきましょう。

従来型の生成AIチャット
ユーザーが入力した質問や指示に対して、テキストで回答する。
その回答の(期待値により近づけるための)精度を上げるための情報は、人間が調べて、整理して、AIに与える必要がある。

例:提案書を作るなら、「顧客情報」や「競合比較」などを人間が準備して、AIに問を投げて書かせる。

従来型の生成AIチャットフロー.png

エージェント型AIチャット(≒Agentic AI

目的を理解したうえで、必要な情報を自分で取りに行く(外部API、社内DB、社内ファイルサーバなどエンタープライズシステムへの安全なアクセス)。さらに、タスクを分解し、複数のステップを自動で実行する。

 

例:提案書作成であれば、

1. 依頼内容から目的を判断し、必要なタスクを分解・整理する(顧客情報の取得/競合情報の収集/取得・収集情報の整理)

2.顧客Aの最新案件情報の取得CRM/社内DBにアクセスして現時点の実際の情報を取得してくる)

3.競合企業の直近動向の収集・要約(外部ニュースAPI/社内ナレッジにアクセスしてそれっぽい情報をピックアップしてくる)

4.強みの差別化観点の抽出(取り扱っている製品資料から情報を参照)

5.ドラフト生成(実際にドキュメント作成まで実施してすぐ使える形にしてくる)

 

エージェント型AIチャットフロー.png

インパクトの本質

人間の“情報整理”という負担を大幅に削減

実はこの「調べて、まとめて、渡す」前処理が最も手間…なんてことも。
Agentic AI
はこのようないわゆる“ゴミ捨て前の見えない家事のような前段作業を肩代わりしていきます。

 

新人・中途メンバーの即戦力化

新しく入った人にとって、一番大変なのは「どこから情報を集めればいいか」ではないでしょうか。ベテランの暗黙知に頼る部分が多くて、マニュアル化も難しいし、その時の状況やニュアンスで必要な情報は大きく変わります。
しかも、人に聞くしかないけど、聞き方が難しくて時間がかかったり、やっと返ってきた資料が全然意図と違ったり…そんなこと、よくあります。

 

この初歩的な情報整理という土台をAgentic AIがサポートしながら整えてくれることで、メンバーは要点の判断・意思決定に集中できます。
組織としても、かかわる人全員のコミュニケーションコストが下がりますね。いつも答えてくれていた優しい人の時間を確保できます。

このように付加価値ももたらしながら、本当の意味で「指示を出すだけでやりたいことが完了」する世界が、現実味を帯びてきています。

3. なぜ今、Agentic AIが注目されているのか

背景技術の進化(LLM+外部連携)

基盤となる大規模言語モデル(LLMの能力向上に加え、外部システム連携の仕組みが急速に整ってきました。Agentic AIの肝は、意思決定・計画・ツール利用・複数ステップ推論を組み合わせて、現実世界の業務フローを実際に動かせること。

外部連携促進により、Agentic AIは社内のナレッジベースへのアクセス、さらには端末・設備の制御にまで触れられるようになりました。結果として、これまで事前の「人間の手続き」に依存していた工程を、AIが自律的に取り回すことが可能になってきています。

実用化の鍵は「別システムとの安全な連携」

とはいえ、業務で本当に使えるAgentic AIを作るには、単に連携ができればよいわけではなく、その連携の品質はとても重要です。

品質での要点は3つあります。

エージェント型AIの品質要点.png

安全な接続:認証・認可、監査ログ、境界制御(どのデータに、何の操作権限で触れられるか)。

再利用可能なインターフェースAIがツールやデータソースへ標準的な方法でアクセスできること(専用のアクセス方法をツールごとに都度設けなくて良いか)。

運用容易性:接続先が増えても、設定・更新・障害切り分けが回ること。

この3つの要件を満たすための鍵になるのが、MCPModel Context Protocolです。

 

MCPは一言でいえば、「AIと業務システムを安全に接続するための標準化プロトコル」

 

目的は、

  • 統一的な接続の枠組みで、社内外のシステム・ツールを安全に呼び出す
  • 権限やコンテキストを明確に管理し、監査可能性を保つ
  • 再利用性・拡張性の高い接続方式で、エージェントの導入と運用を楽にする
    といった点にあります。

 

このような標準ができてきたからこそ、Agentic AI社内システムや外部システムとスムーズに連携できるようになり、「計画して動くAI」が、さらに「安全に適切な権限で業務を回せるAI」へと近づいていきます。つまり、MCPは現場導入のボトルネックであるつながり方を解くための共通言語であり、Agentic AIを実用化に押し上げる推進力なのです。

 

詳細は次回で深掘りしますが、先にこのポイントを押さえておくと、「なぜ今エージェント/Agenticというキーワードが実用化に近づいているのか」が腑に落ちるはずです。

モデルの賢さだけでは足りず、接続の標準化が整ってきたからこそ、安全に、拡張可能に、保守可能な形で文字通りエージェントとして試験導入と改善サイクルが回り始めている――この構造理解が重要です。

4. 次回予告

次回は、Agentic AIの実用化を支える鍵『MCPModel Context Protocol)』をより詳しく解説します。

「指示待ちAI」から卒業し、あなたの会社のAIを安全に“一緒に動かす”ための実践的な視点をお届けします。どうぞお楽しみに!

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