データ基盤を整備し、売上・業績・在庫・KPIなどの数値を可視化できる企業は増えています。
一方で、数字が変化した理由や、その背景にある現場の判断、次に取るべきアクションまで把握するには、データ基盤だけでは十分ではありません。

2026年10月6日に開催したWebinarでは、構造化データと、議事録・提案書・メール・チャットなどの非構造化データを組み合わせ、企業コンテキストを踏まえたAI活用へつなげる考え方を紹介しました。本記事では、Webinarでお伝えした内容を振り返ります。

Index

データは見えるようになった。その先にある課題

データ基盤を導入すると、これまで部門やシステムごとに分散していたデータを集約し、ダッシュボードで状況を把握できるようになります。経営や現場にとって、これはAI活用の重要な出発点です。

しかし、数字が見えることと、数字を業務で使いこなせることは同じではありません。

  • なぜこの数字になったのか
  • どのような判断や活動が背景にあったのか
  • 誰が、どの業務で対応すべきなのか
  • 次に何を確認し、どのようなアクションを取るべきなのか


こうした問いに答えるには、データベースに整理された数値だけでなく、会議や顧客対応、現場の報告、過去の意思決定に関する情報が必要です。データ基盤を導入した後も、過去の議事録や資料を探したり、担当者に直接確認する業務が残っています。

これは、データ基盤の価値が低いということではありません。数値データと、数値の背景を示す業務情報が、まだ十分につながっていないということです。

構造化データと非構造化データを組み合わせる

構造化データとは、売上、受注、在庫、業績、KPIなど、項目や形式が定義され、データベースや表形式で管理しやすいデータです。データウェアハウスやデータレイクハウスに蓄積することで、分析や可視化に活用できます。

一方、非構造化データには、次のような情報が含まれます。

  • 会議議事録や会議の文字起こし
  • 提案書、報告書、マニュアル、プレゼンテーション資料
  • メールやチャット
  • 営業メモ、タスク、顧客対応履歴
  • 現場の作業記録や担当者が残した知見
     

非構造化データは、単純に表形式へ変換しにくい一方で、数字の背景や判断理由を理解するための重要な手がかりを含んでいます。
そのため、AI活用では「構造化データを集める」だけでなく、構造化データと非構造化データを、業務上の関係性に沿って組み合わせることが重要です。

データ基盤はAI活用の土台になる

Webinarでは、データ基盤の構築からAIエージェント、BI、データマネジメントまでを一体で支援する考え方も紹介しました。

一般的には、次のような流れでデータ活用を進めます。

  1. データレイクハウスなどに、社内のデータを集める
  2. データをクレンジングし、業務で使える状態に整える
  3. BIツールで指標や進捗を可視化する
  4. 業務に特化したAIエージェントや分析機能を組み合わせる
  5. ガバナンスや運用を整え、継続的に改善する


ここで重要なのは、データを集めること自体を目的にしないことです。どの業務の、どの判断を改善したいのかを先に定め、その目的に必要なデータを選び、段階的に整備する必要があります。

実践例:数字の横に、業務コンテキストを置く

Webinarでは、社内で運用している顧客戦略ダッシュボードの例を紹介しました。

このダッシュボードでは、顧客ごとに、取引状況、担当者、商談ステージ、見通し金額などの構造化データを組み合わせ、顧客戦略の進捗を可視化しています。経営層やマネージャーは、顧客ごとの状況やボトルネックを一覧で把握できます。

しかし、商談や契約がまだ発生していない顧客については、従来の営業データだけでは「何も進んでいない」のか、「活動は進んでいるが、まだ案件化していない」のかを判断できません。

そこで、次のような非構造化データを組み合わせます。

  • 提案書や顧客戦略資料
  • 名刺情報
  • 商談メモやタスク
  • メール、カレンダー、会議記録
  • 社内のプロジェクトやコラボレーションの記録
     

これらの情報をAIエージェントが参照することで、たとえば次のような状態を補足できます。

  • まだ商談化していないが、関係構築が進んでいる
  • 顧客戦略上は重要だが、具体的な活動が停滞している
  • 商談金額が下がった背景に、活動量の減少やネガティブな兆候がある
  • ダッシュボード上の変化を、どの活動や記録から説明できる


つまり、ダッシュボードに表示された数字だけで判断するのではなく、その数字に関連する業務情報を重ねることで、マネージャーが介入すべきかどうかを判断しやすくなります。

製造業で顕在化する、非構造化データの課題

製造業では、生産計画、実績、調達、受注、在庫など、多くの構造化データが蓄積されています。加えて、センサーやロボット、OT・IoTからもさまざまなデータが生まれています。

それでも、生産管理の担当者は、次のような判断を日々求められます。

  • 生産の遅れがどこで発生しているのか
  • 調達や過去の受注状況にどのような影響があるのか
  • 在庫の回転率に課題がないか
  • 現場でどのような例外対応が行われているのか


これらの判断には、システム上の数値だけでなく、現場の報告、会議での合意、担当者の判断理由などが関係します。構造化データと非構造化データを分けて確認している限り、担当者は複数のシステムや資料を行き来しなければなりません。

この状態を改善するには、非構造化データを単に保管するのではなく、業務上の意味や関係性を捉え、必要な数値と結びつけて活用できる状態にすることが求められます。

AIに必要なのは、企業コンテキスト

企業コンテキストとは、企業や組織の中で蓄積された、判断の背景、業務上の関係性、固有の用語、過去の経緯、意思決定の前提などを指します。
同じ数字でも、企業や部門によって意味は異なります。単に売上が下がったという事実だけでは、原因も対応策も分かりません。重要顧客との関係、社内の優先順位、過去の合意、現在進行中のタスクなどを合わせて理解することで、初めて「なぜ起きたのか」を考えられます。

これは、新しく入社した社員にも似ています。優秀な人材であっても、入社初日から会社の事情を理解し、適切な判断をすることはできません。引き継ぎ資料やマニュアルを読み、会議や日々のやり取りを通じて、誰がどのような役割を持ち、どの顧客とどのような関係があり、どの判断が重視されるのかを学んでいきます。

AIも同じです。モデルの能力だけでなく、その企業で仕事をするために必要なコンテキストを与えられることで、より実務に即した回答や提案につながります。

すべてを一か所に集めればよいわけではない

非構造化データを集めることは重要ですが、すべての情報を無条件に一か所へ集めればよいわけではありません。

まず、対象となる業務と、そこで必要な判断を明確にする必要があります。そのうえで、どの構造化データと、どの非構造化データを組み合わせるかを定めます。データの品質や権限、更新頻度、重複、不要な情報を確認しながら、AIが利用しやすい状態に整備していくことが重要です。

また、AIが参照する情報量が増えるほど、処理コストや回答までの時間も考慮しなければなりません。必要な情報を必要なタイミングで扱えるよう、業務上の関係性を踏まえたコンテキスト設計が求められます。

実際の進め方としては、最初から全社のあらゆるデータを対象にするのではなく、次のような小さなテーマから始める方法が現実的です。

  1. 改善したい意思決定や業務を一つ選ぶ
  2. 判断に必要な構造化データを特定する
  3. 数字の背景を示す非構造化データを特定する
  4. 両者を組み合わせたユースケースを試す
  5. 成果を確認し、対象部門や業務を広げる

Gleanが担う、企業コンテキストの活用

Gleanは、データ基盤やBIツールを置き換えるものではありません。データ基盤に蓄積された構造化データに対して、文書・会議・メッセージ・業務記録などから企業コンテキストを補い、AIによる分析、コンテンツ作成、業務実行につなげるAI基盤として活用できます。

Webinarで紹介した社内事例でも、構造化データの変化をきっかけに、関連する非構造化データを参照し、活動内容や背景を確認するという使い方を実践しています。

データ基盤が「何が起きているか」を示すものだとすれば、企業コンテキストを活用するAI基盤は、「なぜ起きたのか」「次に何をすべきか」を考えるための材料を提供します。両者を組み合わせることで、可視化された数字を、より速く、より的確な意思決定へつなげられます。

まとめ:データ基盤の次は、企業コンテキストへ

  • 構造化データは、現状や変化を把握するために必要
  • 非構造化データは、数字の背景や判断理由を理解するために必要
  • 企業コンテキストは、データを業務上の意味やアクションにつなげる
  • AI活用は、すべてを一度に始めるのではなく、業務単位で小さく始めて広げる


「データは見えるようになったが、意思決定や業務改善につながりにくい」と感じている場合、次に検討すべきなのは、データをさらに増やすことだけではありません。構造化データと非構造化データを業務のコンテキストで結び、AIが企業固有の事情を踏まえて判断を支援できる状態をつくることです。
データ基盤の次に必要なもの。それは、企業コンテキストを活かして、数字を仕事の前進へ変える仕組みです。

本記事で紹介した内容を、Webinar動画で詳しくご覧いただけます。構造化データと非構造化データをどのように組み合わせ、企業コンテキストをAI活用へつなげるのかを、実践例を交えて解説しています。

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