こんにちは、双日テックイノベーション ローカル5G事業推進の畑です。JANOG58 Meeting in Matsuyama(2026年7月15日〜17日、愛媛県松山市)において、双日テックイノベーション株式会社(以下、STech I)は、ホストのアリスタネットワークスジャパン合同会社様、ネットワークパートナーの株式会社愛媛CATV様のご協力のもと、会場の愛媛県民文化会館 別館にローカル5G環境を構築し、別館のスポンサーブースへ無線ネットワーク環境を提供しました。
実際に無線局免許を取得し、ローカル5Gシステムの実機運用はJANOG初の試みとなります。本ニュースレターでは、JANOG58にてローカル5G環境を構築するに至った背景、ローカル5G実験試験局 免許取得などの事前準備、JANOG会期中のローカル5G運用についてご紹介します。

 

Index

1. JANOG58でのローカル5G環境構築の経緯

当初、今回のJANOG58は愛媛県民会館 本館のみでの開催が予定されていましたが、協賛スポンサーの応募が殺到したため、ホストのアリスタネットワークス様は、別館にもスポンサーブースを拡張することを決断。急遽、別館スポンサーブース向けに本館スポンサーブースと同等の無線ネットワーク環境を、短期間で準備する必要に迫られました。

えひめをローカル5Gの聖地に―。この合言葉のもとに、アリスタネットワークス様、愛媛CATV様、STech Iの三社が連携してローカル5Gを活用した基地局の実機運用という、JANOG初の試みに着手することになりました。

今回JANOG58のために準備したネットワーク構成図は下記となります。

ローカル5Gとは


ローカル5Gとは、企業や自治体など通信事業者ではない組織が、自らの建物内・敷地内でユースケースに応じて個別に構築する専用の5Gネットワークをいいます。

産業DXが進み、あらゆるヒト、モノ、コトがデータ連携する中で、高信頼な無線ネットワークがますます求められています。ローカル5Gは、高精細な動画など大容量データのアップロード、AGV(無人搬送車)やAGF(無人搬送フォークリフト)など高速移動する自律移動技術の円滑なハンドオーバー、重要なアプリケーションに対する優先的な帯域確保(Quality of Service)など、従来のWi-Fiでは対応が困難なワークロードに対して高信頼な無線接続を提供します。

2. ローカル5G免許取得

ローカル5Gの利用にあたっては無線局の免許(電波法第四条)の申請が必要です。今回のJANOG58においては、愛媛県民文化会館 別館を基地局設置エリアとする実験試験局免許を愛媛CATV様と協働して申請し、法令に従って適切に電波を使用しました。

ローカル5Gというと、どうしても「免許を取るのが大変そう…」というイメージがあります。一般のユーザー企業が単独でローカル5G免許申請することは実際的ではありませんが、ローカル5Gの知見のあるベンダーの支援を受けることで、工数少なく免許を取得することが可能です。
ここではローカル5G免許取得の流れを、今回提出した資料も参照しつつ紹介することで、具体的なイメージをもっていただければと思います。

ローカル5G免許取得の流れ

ローカル5G免許申請にあたっては、申請書を提出する前に、管轄の総合通信局に相談します。今回の場合、四国総合通信局へJANOG58会期の2カ月前に相談しました。相談の際には、基地局の設置場所や電波のカバーエリア図などを用意します。
今回、四国総通局へ提出したカバーエリア図を例示します。

管轄の総合通信局へ事前相談すると「電波干渉が発生しないように事業者間調整が必要か」「調整先の事業者は誰なのか」などの情報を教えてもらえるため、調整が必要な場合は、当該事業者と電波干渉調整を行います。
 
干渉調整を行ったら、免許申請書類を作成していきます。今回のJANOG58では実験試験局免許を取得するため、以下の書類を作成し、提出しました。

  • 無線局免許申請書
  • 無線局事項書
  • 工事設計書
  • 無線設備系統図
  • カバーエリア図
  • 選任予定の無線従事者リスト
  • 実験計画書
     

無線従事者リストについて補足します。無線従事者とは、電波法によると「無線設備の操作又はその監督を行う者であって、総務大臣の免許を受けたもの」と定義されています。ローカル5Gでは無線従事者として「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格を持つ人を選任する必要があります。
STech Iでは「第一級陸上特殊無線技士」有資格者を含む、無線従事者免許を保有しているエンジニアが多数在籍しており、JANOG58においても適切に電波を使用できるよう運用いたしました。

最後に実験計画書について、今回提出したものを図示します。実験の目的や内容、諸元等を実験スケジュールとともに提出する必要があります。
 

 

AGV/AMRに適切な無線ネットワーク構築を検討している方へ
▶ローカル5G Celona の詳細へ

3. 基地局の構築(Celona PoCパッケージなど)

今回のローカル5G基地局はSTech Iが販売しているローカル5Gプラットフォーム「Celona 5G LAN」によって構築しました。
STech Iでは、ローカル5GのPoCを実施したいお客様向けに、Celonaの構成要素―5Gコア、アクセスポイント、アンテナ、SIM―に加えて、FWやスイッチといったローカル5G基地局構築に必要な機器をパッケージ化した「Celona PoCパッケージ」を展開しています。今回のJANOG58では、このPoCパッケージを利用しました。これにより、構築期間はわずか一日で構築することができました。

アクセスポイントについて

アクセスポイントには、Celonaの屋外用アクセスポイント「AP21-79」を利用しました。AP21-79は北米の防爆規格C1D2に準拠し、摂氏-30℃~55℃での使用をサポートするなど、過酷な産業環境での利用にも耐えうるタフなつくりをしています。

その一方で、大きさ自体は高さx 幅 x 奥行で333 x 240 x 109(mm)と、写真の通り机の上に乗っかるくらいのコンパクトな大きさです。
 

アンテナについて

アンテナについては、Celona純正では指向性アンテナとオムニアンテナを用意していますが、今回は別館全体に電波を届けたかったため、オムニアンテナを天井から吊り下げる形で設置しました。

端末(EU)について

今回のローカル5G基地局構築の目的は、別館スポンサーブースへの無線環境の提供です。スポンサーブースの皆さまへは通常のWi-FiのようにSSIDとパスワードのみで接続できるようにというのがJANOGホストのアリスタネットワークス様からのご要望でした。
そのため、愛媛CATV様より普段の商用サービスにて利用されている5G対応のCPEルーターを借用し、スポンサーブースがある各ルームへ設置。ローカル5G用SIMをCPEルーターに挿入することで、スポンサーブースの皆さまへ無線接続を提供しました。
 

ローカル5Gの大きな特長の一つはSIM認証された端末のみが接続ができるという、プライベート性の高さにあります。他方で、IoTデバイスやAGV/AMFなど、SIM接続ポート(SIMカードスロット)がない端末は、どうしたら良いのかという質問をよくいただきます。そのようなデバイスに対しては、今回のように5G対応のCPEルーター経由や5G対応ドングルにSIMを挿入しUSB接続することで電波を提供するのが一番シンプルな方法となります。

 また今回は、5G対応CPEルーターに加えて、デモ目的にアストロデザイン社のローカル5G対応ウェアラブルカメラ「ACW-P6000」も利用しました。現場の高精細な映像をローカル5Gを通じてアップロードし、遠隔地から現場映像のリアルタイムでのモニタリングが可能なため、スマート保安や遠隔医療などでの活用が期待できます。

4. JANOG58会期中の運用

JANOG58会期中は、ローカル5Gのユーザーとなる、ブース対応されたスポンサーの皆さまからも「快適」「安定している」といったお声をいただくことができました。大きなトラブルもなく、別館スポンサーブースへ無線ネットワーク提供というミッションを無事、完遂することができました。
ここではCelona 5G LANの管理ツールである「Celona Orchestrator」の実際の画面を用いながらJANOG58会期中の無線ネットワークの利用状況を振り返ります。

下図はJANOG58会期中にOrchestratorから確認したトポロジー画面のスクリーンショットです。CPEルーター(”ZTC001”)、アクセスポイント(”AP21 for PoC”)、Celonaの5Gコア(”PoC Cluster”)が問題なく疎通していることを視覚的にも確認することができます。
 

下図はJANOG会期の一日(7月15日)におけるデータ利用量のグラフです。CPE
ルーター(ZTC002)一台だけで、上り(Uplink) 11.46GB、下り(Downlink) 27.15GB、トータル38.6GBのトラフィックが流れていたことが確認できます。

次にJANOG会期三日間でのデータ利用量の総量をご紹介します。三日間で上り約30GB、下り約140GB、合計約170GBのトラフィックが流れました。Celona 5G LANは、今回利用した簡易的なPoCパッケージだけでももっと多くのトラフィックをさばくことができるので「ちょっと周知が足りなかったかな…」と少し反省があります。

5. おわりに

えひめをローカル5Gの聖地に―。JANOG 58でのローカル5G基地局構築・運用の取り組みは、無事成功することができました。今回ホストのアリスタネットワークス様のご厚意により、基地局の周りに簡単なブースを構えさせていただきました。実機やアンテナの存在感もあり、多くの参加者に関心をもっていただくことができました。改めて深く感謝申し上げます。

今後もSTech Iは、愛媛CATV様などのパートナー様と連携しながら、国内におけるローカル5G普及と産業分野への活用とDX促進に取り組んでまいります。

最後までご一読いただき、ありがとうございました。

投稿者名 畑和之
プロフィール 双日テックイノベーションでプライベート・ワイヤレスネットワークのプロダクトマネジメントを担当。趣味はスポーツ観戦。あと、猫を2匹飼ってます。

執筆者
畑 和之

双日テックイノベーションでプライベート・ワイヤレスネットワークのプロダクトマネジメントを担当。趣味はスポーツ観戦。あと、猫を2匹飼ってます。

 

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