ケーススタディ グループ各社の要望に応えるRPA開発者を育成
株式会社IHIエスキューブ様
IHIグループ共有の大規模なRPA基盤を担う株式会社IHIエスキューブでは、RPA開発の内製化を目指し、開発者の育成が求められていた。BluePrismの認定トレーニングの活用により、RPA開発者の要員育成を実現された。
Before/After
課題/目的
- 全社的にRPA運用を一本化する必要性
- ソフトウエアロボットをもれなく統制できる開発運用体制づくり
RPA(BluePrism)を導入
効果
- 当初計画通りにRPA内製化を達成
- 手作業だったタスクの自動化によって年間2万4,000時間相当のリソースを創出
- 企業名:
- 株式会社IHIエスキューブ様
- 所在地:
- 東京都江東区豊洲3-1-1 豊洲IHIビル
- 設立:
- 2003(平成15)年4月1日
- 従業員数:
- 519名(2022年4月現在)
- 事業内容:
- 国内有数の重工メーカーであるIHIグループのIT部門として1997年に設立。外販している倉庫管理などのパッケージシステムや、IoTを活用して大型構造物のリモート保守を実現するプラットフォーム「ILIPS」 の開発提供、さらにIHIグループ全体の情報システム部門としても実務を担っている。
一元的なRPA開発を担う社内人材の速成が必要に
株式会社IHIエスキューブは、ジェットエンジンや発電設備、橋梁、物流システムなど幅広い製品を手がける総合重工業グループのICTを支える、従業員数およそ500人の企業だ。
同社の親会社で、グループ全体のICT戦略と業務改革を統括する株式会社IHIは2014年以降、各事業領域の重要分野に充てるリソースを拡大する狙いから、間接業務を集約・標準化して外部に委託(BPO)する取り組みを本格化。グループ内の各所で処理してきた財務関連の定型業務の大半を移行させたほか、2018年からはBPOのさらなる生産性向上を目的に、ソフトウエアによる自動実行(RPA=ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入した。
これと並行して、データ集計・要求登録といったバックオフィス業務においてもRPAの活用がスタート。実務を担うIHIエスキューブのES事業部 生産管理ソリューショングループには、PC1台単位で運用可能なデスクトップ型のRPAツールが導入された。
部署単位・端末単位で着手したRPA活用で業務効率化の確かな成果が確認されたことから、導入規模の拡大が検討され始めた一方、200社余の関連会社に3万人近い従業員を擁するIHIグループにとっては、グループ各社内での全社展開も見据え、ソフトウエアロボットをもれなく統制できる開発運用体制づくりが不可欠だった。
「Blue Prism」でグループ共通のRPA運用基盤を構築
そこで新たに、ロボットを集中管理可能なサーバー型RPAツールの中でも、権限管理など充実したセキュリティ機能に定評がある「Blue Prism」を採用し、グループ共通のRPA運用基盤を構築することが決定。IHIエスキューブは、親会社の「高度情報マネジメント統括本部」と共同で、部署横断的な推進組織(CoE)の中核を担うこととなった。
IHIエスキューブのRPA戦略を統括する奥井直輝氏(ビジネスソリューション事業部 企画グループ チーム長)は、当時をこう振り返る。
「デスクトップ型RPAは、現場の担当者個人の創意工夫でも活用を進められる半面、異動などを機に“ブラックボックス”が生じかねないリスクもあります。そのため私たちは、RPAの開発運用をグループ全体で一本化できるツールと体制を選びました。Blue Prismによる開発は当初、代理店である日商エレクトロニクス(現、双日テックイノベーション)株式会社に依頼していましたが、私たちCoEが各所にRPAをPRしたところ予想を超える反響があり、社内技術者を早急に養成すべきと判断して同社の研修プログラムの利用を決めました」
講師と双方向の研修で「知識が身に着く実感」
Blue Prismによる一本化を図るグループ共通RPA運用基盤は、独自にRPAの活用検討を進めていたIHIのプラント部門が合流するなど、全社的な合意を得た形でスタート。各現場からの要望状況を踏まえ、2人1組のRPA開発担当を、まずグループ共通システムを運用する「基幹業務グループ」や、グループ各社専用ソフトの開発・改修を担う「アプリケーション開発グループ」などに合計6チーム配置することが決まった。
そのための準備としてIHIエスキューブでは、Blue Prismの公式テキストと開発環境を用いた約12時間の自習を行った社員が、日商エレクトロニクスの講師によるビデオ会議方式のトレーニングに臨んだ。BluePrism導入から3年が経過した現在、全7コースあるトレーニングのうち中・上級にあたる「育成コース」「実践コース」(各1日)を中心に、のべ16人が受講を終え、実地での開発運用に従事している。
このうち、デスクトップ型RPAでの開発経験があった小幡 朱莉氏(同事業部 基幹業務グループ)は、「より多機能で、できることが一気に増えるBlue Prismを正しく使いこなすにはルールの理解が重要で、研修を通じてしっかり基本を学んだ上で開発に入れたほか、デベロッパー資格対策の講座を利用して知識の穴をなくすこともできました。Blue Prismと特定のアプリケーションとの相性といった実践的な部分についても、講師の方から得た知識が役立っています」と話す。
また、Blue Prismによる開発に先立ってプログラミングの経験があり、現在は主にRPAの要件定義を担当している森山 裕之氏(同グループ)は「少人数で手を動かしつつ、随時質問もできる環境で密度の濃い学習ができた結果、要件定義においてもBlue Prismの機能や特性を踏まえた計画ができるようになりました」と、トレーニングの成果を説明する。
特に講師による指導と、公式テキストを用いた独習の違いについて、千野瑞季氏(同)は「課題に取り組みながらリアルタイムに双方向のやりとりができる研修では “知識が身につく”実感があり、他の受講生からの質問と回答が聞けるのも、1対1で得られない発見がありました」とコメント。RPA開発の実務においても「担当者がいつ・誰に代わっても理解しやすい実装」を目指し、学んだポイントを常に意識しているとのことだ。
年2万4,000時間を生んだ開発をさらに加速
研修を活用し、当初計画通りにRPA開発運用の内製化を達成したIHIグループでは2021年12月現在、株式会社IHIを中心に40業務・93プロセスにBlue Prismを導入。発注情報と検収情報の照合や業績データの集計など、従来手作業だったタスクの自動化によって年間2万4,000時間相当のリソースを創出しており、こうした定量効果の伸び率は年々上昇を続けている。
その背景について、社内開発者の1人でプログラミングでの業務改善経験もある室田 和男氏(ビジネスソリューション事業部 企画グループ)は「研修でも学んだBlue Prismの特徴の1つに、開発したソフトウエアロボットを細分化し、流用可能な部品の組み合わせとして管理する点があります。そのため、開発実績を重ねるにつれて新規開発がスピードアップしているほか、部品に加えた修正が利用している全ロボットに反映するため、メンテナンスの負担も抑えられています」と分析。「プログラミングを含む既存の業務改善手法と併せて、適材適所でBlue Prismを活用できたら」と意気込む。
コロナ禍を契機に増加した在宅勤務でも、同社の開発者はIHIグループの社内ネットワーク上に構築されたBlue Prismの開発実行環境に接続して従来通りのRPA運用を続けており、「気軽なビデオ会議を利用し、導入した部署や、これから導入する部署とのコミュニケーションを取りやすくなるなど、むしろリモート環境がプラスに働いている面の方が大きいようです」と、奥井氏は前向きに受け止める。
引き続き、親会社の各事業部門から開発依頼が多数寄せられているほか、これからRPA運用基盤への参加を呼びかけるグループ企業からの需要も大きいと見込む同氏は「各現場がRPAに寄せる期待に素早く応えられる『毎月1業務ペース』での開発が、今後の目標です。実装スキルにとどまらず、業務ヒアリングから実装開始までの段取りもブラッシュアップしていけたら」と、さらなる意欲をみせている。
ケーススタディ
ケーススタディに関するお問い合わせは、
こちらのフォームからご連絡ください。