ケーススタディ 働き方改革と市民サービスを両立。美作市が実現したMistによる"自ら運用できる"自治体ネットワーク
岡山県美作市
岡山県美作市は2025年5月、新庁舎への移転を実施した。災害対策拠点としての施設強化を中核としながら、市民サービスの充実や職員の働き方改革を目標としたIT改革にも取り組んだ。その一環として、ジュニパーネットワークスの「Mist」を全面導入し、旧庁舎では別製品を用いた一部のテスト環境のみであった Wi-Fi環境を拡張し、全庁的な無線化を果たしている。アクセスポイント数を大幅に増やしながらも、クラウドやAIなど先端技術を応用したソリューションで運用効率は向上。通常は固定席であるが、プロジェクトの立ち上げ時や緊急時など状況に応じて柔軟に席の移動が可能となる半フリーアドレス制の導入やPC活用・ペーパーレス化の促進、ネットワークインフラの管理負荷軽減などに寄与し、市民の相談対応の迅速化・効率化といった自治体DXの成果が生まれつつある。
Before/After
課題/目的
- 新しい働き方に適したIT環境の実現
- 半フリーアドレス制の実現とPC活用の促進
- 新庁舎でネットワーク環境の強化へ
- 市民サービスの品質向上にも寄与
ジュニパーネットワークスの「Mist」を全面導入
効果
- アクセスポイント数が 3 倍になってもWi-Fi環境が安定的に稼働
- PCのモビリティが向上し、会議のペーパーレス化などIT活用が促進
- 職員が運用可能、障害原因をすみやかに特定
- 市民相談での情報提供などが効率化
- 企業名:
- 岡山県美作市
- 所在地:
- 岡山県美作市美来1番地
- 設立:
- 2005年3月31日
- 事業内容:
- 2005年に5町1村が合併して誕生。湯郷温泉、宮本武蔵生誕地、岡山国際サーキットなど観光資源が豊富で年間約80万人が訪れる。
人口:約2万4,582人(2025年5月31日現在)
課題・目的
災害対策拠点を目指した新庁舎、市民サービス向上や働き方改革も
岡山県の北東部に位置し、鳥取県や兵庫県と接する美作市は、豊かな自然に囲まれた観光資源が特長である。2005年に5町1村の合併により誕生、人口約2万5,000人という小規模な自治体ではあるが、年間約80万人が訪れる観光名所でもある。
美作三湯の一つである湯郷温泉は、約1,200年前に円仁法師が白鷺に導かれて発見したとされる「鷺の湯」として全国的に知られる名湯で、京阪神の奥座敷として多くの観光客が訪れている。剣豪・宮本武蔵の生誕地としても有名で生家跡を目指す歴史ファンは多く、岡山国際サーキットや女子サッカークラブ「岡山湯郷Belle」のホームなどスポーツファンにも人気。
美作市は2025年5月、災害対策の強化を中核として、新庁舎への全面的な移転を果たした。美作市 政策推進部 情報政策課 課長の花房昌史氏は、「旧耐震基準であった旧庁舎は、北部の活断層の存在や河川からの浸水など、非常時に災害対策の拠点として機能しないリスクがありました。新しい庁舎は、災害対策本部として、万が一の際には市民の安全を守る避難所としての機能強化を目指しました」と述べる。
もちろん災害対策だけでなく、市民サービスの向上や職員の業務環境の改善も目標として挙げられた。利用しやすい機能的な設計に加えて、美作市産の木材をふんだんに活用した作りが温かみを演出しており、市民が安心してサービスを受けられる場所となっている。
新庁舎におけるもう1つの目標がIT環境の強化だ。中でも重要な課題の1つであったのが、Wi-Fi環境の整備である。
「自治体職員の働き方も変化しつつあり、PC業務が中心となっています。会議で資料ファイルを共有したり、市民相談でインターネットの情報を参照したりと、PCをもっと柔軟に利用できる環境が求められるようになっていました。また新庁舎では柔軟なフリーアドレス制を実現したいという声もありました。LGWAN接続系における無線LAN利用について国のガイドラインの改定もあり、新庁舎では全面的なWi-Fi整備を進めました」、情報政策課 課長補佐 北村浩行氏は振り返る。
政策推進部 情報政策課 課長 花房 昌史 氏
Wi-Fi環境の大幅な増強、Mistで安定性と運用性の両立へ
美作市の旧庁舎では、一部の会議室を中心に小規模なWi-Fi環境を構築し、接続できるPCを限定して検証を行っていた。それを新庁舎では、庁舎全体・すべての職員に行き渡るWi-Fi環境を整備する必要があるため、いくつか解決すべき課題が残されていた。
1つは安定性だ。検証環境ではアクセスポイント十数台という小規模にもかかわらず、通信速度が突発的に低下するという事象もあった。2つ目は運用性、管理ツールが不安定でいざというときに管理できないケースもあった。新しい環境はアクセスポイント50台超の規模になるため、職員がいつでも安定的に利用でき、運用負荷の肥大化も避けたい。そこで注目したのがジュニパーネットワークスの「Mist」である。
政策推進部 情報政策課 課長補佐 北村 浩行 氏
情報政策課 係長 岡田佳昌氏は、「ある程度は自身で管理し、トラブルなどへの対応を迅速化したいと考えていました。Mistは素人でも扱いやすく、チャットボットなどを活用してすばやくトラブルを切り分けられます。もちろん高度な機能も備えており、専門家に運用を任せることもできます。また、有線LANのように管理外のPCを勝手につなぐことができないため、セキュリティレベルの向上にも役立っていると考えています」と述べている。
より大規模な組織への導入実績も豊富で、安定性についても申し分ない。もともと美作市ではジュニパーネットワークスのスイッチ機器を利用しており、Mistによって無線と有線の両方を統合管理できるという点も注目された。
政策推進部 情報政策課 係長 岡田 佳昌 氏
業務の効率化に寄与、市民サービスが改善するシーンも
美作市では、新庁舎の約50基のほか、いくつかの外部拠点にも約10基のJuniper Access Pointsを導入し、クラウドコントローラーで統合管理できる環境を整えた。サービスインから1か月ほど、大きなトラブルはなく安定的な稼働を実現できている。
「職員から問い合わせを受けることはありましたが、Mistの管理画面ですぐに状況を把握し、大きな障害ではないとすぐに回答できました。以前はトラブルがあっても原因がまったく分からないことがあったが、Mistはすばやく分析でき、適切な報告やアドバイスを提供できるのがよいですね」と岡田氏は高く評価している。
Mist/Wi-Fiの採用によって、目標だったフリーアドレス制も実現し、職員の働き方は大きく変化した。会議の際にPCを持ち込む職員も増えつつあり、プロジェクターに資料ファイルを投影するなどして、積極的にペーパーレス化を推進しようというシーンもよく見られるようになった。手軽にPCを持ち運べるようになったため、市民サービスの柔軟性が向上したという声も聞かれる。
「市民から重要な相談ごとがあったとき、個室で話を聞くことがあります。以前は紙の資料を持ち込んでいたため、情報が足りないこともしばしばありました。今はPCを持ち込んで簡単に情報を提示したり問いに答えたりできるため、市民サービスのスピードアップと品質向上に役立っています」(北村氏)
さらに将来的には、新庁舎の会議室スペースとWi-FiなどのIT/AV環境を市民へ提供し、イベントなどに活用してもらえるような取り組みも検討していきたいとのことだ。
最後に花房氏は、「職員のITスキルや内製力の向上は、私たちにとって目標の1つです。そのためできるだけよい技術、扱いやすい製品を採用していきたいと考えています。Mistは非常に使いやすく、有線・無線を統合的に管理できるという利点もあります。美作市が自ら運用できるネットワークを構築できたと考えています」と述べた。
地方自治体にとって、ネットワークを含めたIT運用は大きな課題の1つである。美作市のように積極的に取り組んで解を求める自治体を、双日テックイノベーションはしっかりサポートしていきたい。
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