SaaSやクラウドを前提とした業務が当たり前となった現在、ネットワークは「つながればよい」存在ではなく、DXの取り組みを下支えする重要な基盤へと変化している。接続性が不安定な環境ではDX施策は十分に機能せず、生産性や売上機会が失われかねない。
一方で、拠点や端末の増加により運用は複雑化し、人手による対応には限界が見え始めている。
可用性中心の発想から「ユーザー体験としての通信品質」へ——
ここでは、双日テックイノベーションの担当者への取材を通じて、大規模ネットワークの運用自動化を見据えたAIOps時代の製品・ソリューションの選び方を探る。

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- 双日テックイノベーション ネットワークインテグレーション事業本部 事業推進部 二課
マーケティングマネージャー 岡崎 直紀
工場や営業拠点、研究施設などを全国・海外に多数展開する企業では、ネットワーク運用の負荷が年々増大している。拠点ごとに利用環境や端末構成が異なり、障害発生時にはログ確認や現地対応、関係部門との調整に多くの工数を要する。
こうした環境では、人手に依存した運用そのものが限界に近づいており、運用の前提を見直す必要性が顕在化している。
「例えば、オフィスのレイアウト変更や人員増加があるたびに、本来であれば電波設計や出力調整をやり直す必要があります。しかし、これを数十、数百という拠点で、その都度エンジニアが現地へ赴いて対応するのは、オペレーションとして物理的に難しいですよね」(岡崎)
また近年は、通信の安定性そのものが業務効率や生産性に直結しており、利用者が「快適に使えているかどうか」という体験品質まで含めて管理する必要性が高まっていると指摘する。
「もうネットワークにつながるのが人だけではなくなってきています。工場に設置されたセンサーや制御機器、現場で作業しながら使うタブレットなど、利用シーンが大きく広がっています。そうなると、少しの遅延や接続不良でも業務が止まってしまう。以前なら見過ごされていた『なんとなく遅い』という体感も、今は無視できない影響を持つようになっています。だからこそ、通信が成立しているかどうかではなく、ユーザーや業務の体験としてどう見えているかを可視化する必要が出てきています」(岡崎)
ネットワークは単なるITインフラではなく、現場の業務品質を左右する基盤へと役割が高度化している。通信の不安定さが現場業務の停滞や生産性の低下につながる以上、従来の稼働状況中心の運用では十分とは言えなくなってきている。
一方、ネットワーク運用を支える技術環境そのものは、この数年で大きく様変わりしている。かつてはセキュリティ面の懸念から敬遠されていたクラウド管理型の運用ツールは一般化し、オンプレミス機器をクラウド上のコントローラから一元管理するスタイルが定着した。
こうした変化を背景に注目されているのが「AIOps」という考え方である。AIOpsは、膨大な運用データをAIで分析し、障害対応や運用判断を支援するアプローチを指す。
その技術的な実態はさらに進化しており、ネットワーク機器に特化した「AI Networking」や、AIが状況を認識・推論し、対応策の立案から実行までを担う「Agentic Ops」へと広がりを見せている。
特に「Agentic Ops」は、AIが運用状況を理解したうえで判断し、対応までを担うという点で、自律ネットワークの完成形に近づく重要な概念として注目されている。今後のネットワーク運用において、中心的なトレンドの一つになっていくことは間違いないだろう。
従来は人の判断に委ねられていた運用プロセスの自律化も、現実的な選択肢の一つとして検討され始めているというわけだ。
ただ現時点では、こうした技術進化を一括りにしてAIOpsと表現することが多い。そのため、本記事でもマーケティングや実務の文脈で一般的に用いられている呼称に合わせ「AIOps」という言葉で整理していく。
工場や営業拠点、研究施設などを多数抱える大規模ネットワーク環境では、人手による監視や判断を前提とした運用は持続可能ではない。そのため、製品選定の段階から、運用自動化を見据えた視点が必要だ。
従来は、障害検知の速さやログ取得の粒度といった点が重視されてきた。しかし、AIOps時代においては「障害が起きたことを知る」だけでは不十分なのだ。
通信品質や利用状況を継続的に把握し、問題が顕在化する前の兆候を捉えられるかどうかが重要視される。特に大規模環境では障害が発生した場合の影響範囲が広く、その損失も大きくなりやすい。事前に障害を予防することができれば、運用に対する投資対効果は高くなる。
もっとも、ユーザー体験の可視化は難易度の高い取り組みと捉えられがちだが、実は「技術的に見て特別に難しいことをしているわけではない」と岡崎は話す。
「これまでの運用では『なんとなく遅いけれど接続はできている』状態を、あまり重視して見てきませんでした。ただ最近は、体験をきちんと重要視しようという考え方が一般的になってきています。技術的には、パケットを取得して解析し、再送がどれくらい発生しているか、ローミングがうまくいっていない状態がどの程度起きているかを見ているだけなので、そこまで難しいわけではないです。我々が取り扱う製品にも機能として内蔵されていますね」(岡崎)

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- 双日テックイノベーションが提供する、ジュニパーネットワークス社「Mist」のAI可視化機能
ネットワーク運用における体験品質の可視化は、曖昧な感覚論ではなく、再送率や応答時間、ローミング状況といった客観的なデータに基づいて実現できる。重要なのは、そうしたデータを継続的に収集・分析し、運用判断に活かせる形で提示できるかどうかだ。
この前提に立つと、AIOps時代の製品・ソリューション選定では、単一の機能や性能を比較するのではなく、運用全体をどう変えられるかという視点で段階的に確認していく必要がある。具体的には、次のようなポイントが重要となる。
● 体験品質を可視化できるか
障害の有無だけでなく、再送率や応答時間、ローミング状況などを通じて、利用者や業務として「快適に使えているか」を把握できること。
● データを運用判断に結び付けられるか
情報を並べるだけでなく、AIが傾向や異常の兆候を整理し、運用担当者の判断を支援できるしくみを備えていること。
● 段階的な自動化への対応を前提にしているか
現時点では人が主体の運用であっても、将来的に機械が主体となる自律運用へと進化できる思想やロードマップを持っていること。
取材の中で岡崎は、こうした段階的な視点の重要性について次のように語っている。
「今の技術はかなり進んでいますが、すべてを機械に任せる完全な自律運用は、まだハードルが高いのが実情です。技術的な側面だけでなく、運用する側が受け入れられるかという問題もあります。人が主体で機械がサポートする段階から、機械が主体で人がサポートする段階へ、少しずつ移行していくのが現実的だと思います」(岡崎)
つまり、製品選定で重要なのは「今すぐ何ができるか」ではなく、人が主体の運用を前提としながら、将来的に機械主導の運用へと無理なく移行できるかどうか。
その方向性や拡張性をどう捉えるかが、AIOps時代の製品・ソリューション選定における重要な判断軸となる。
ネットワークの運用自動化を検討する際、多くの企業が「どのAIOps製品を選ぶべきか」という問いに行き着くが、その問い自体にも注意が必要だと岡崎は指摘する。
「自律的なネットワークの運用環境は、製品単体で完結するものではありません。ネットワークの構成や、どのデータをどう取得できるか、運用をどう回すかまで含めて設計して、初めて自動化が成立します。どの製品かではなく、どう設計し、運用していくかも重要ですね」
自社の環境や運用体制を前提に、運用の自動化が機能する全体像を描けるかどうか。AIOpsを活かすには、製品選定と同時に、設計・実装・運用までを一体で考える視点が欠かせないようだ。
「進化の速い自律型ネットワークの市場には、MistやHPE Arubaといった、特定領域で突出した性能を持つ製品がすでに存在します。私たちの強みは、それらをフラットな視点で選定し、お客様の環境に合わせて最適な組み合わせをコーディネートできる点にあります」
双日テックイノベーションのアプローチが実際の現場でどのように機能したのかを示す事例が、岡山県美作市における新庁舎ネットワークの刷新プロジェクトである。

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- ジュニパーネットワークス社「Mist」を導入した岡山県美作市の事例
岡山県美作市は、2025年5月の新庁舎移転を契機に、庁舎ネットワークの抜本的な刷新に踏み切った。新庁舎は災害対策拠点としての機能強化に加え、市民サービスの向上や職員の働き方改革を同時に実現することを目的としており、ネットワークにも従来の延長ではない設計が求められていた。
旧庁舎では、無線LANの利用範囲が限られており、職員がノートPCを活用して柔軟に業務を行う環境は十分とは言えない状況にあった。また、通信トラブルが発生した際には原因特定に時間を要し、IT担当者の運用負荷が大きいことも課題となっていた。
新庁舎では、職員全員が日常的に無線LANを利用することを前提に、安定した通信品質と効率的な運用を両立させるネットワーク基盤が望まれる。
そこで採用されたのが、AIを活用した運用自動化が可能なMistを中核とするネットワーク構成である。
Mistの導入により、ネットワークの状態やトラブルの兆候が可視化され、AIによる自動分析で原因特定が可能となった。これにより、従来は人手に依存していた切り分け作業の負担が軽減され、IT担当者はより付加価値の高い業務に時間を充てられるようになっている。

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- ジュニパーネットワークス社「Mist」に備わるAIアシスタント「Marvis」による自動的な原因分析
さらに、有線LANと無線LANを統合的に管理できる点も評価されており、運用品質の向上とあわせてセキュリティ強化にもつながった。自律運用を見据えた設計と、実運用に耐える形での実装が、行政DXを支える基盤として着実に機能しつつある。
「AIOpsや自動化の目的は、単に運用を楽にすることではありません。美作市の事例にもあるように、IT担当者が日々の障害対応や保守作業に追われる状態から解放され、DXなど付加価値の高いプロジェクトにITの視点で関われるようになることが重要だと考えています。今行っている無駄な手作業を自動化技術に任せることで、お客様がDX施策へリソースをシフトできるよう、当社も支援しています」(岡崎)
自動化はゴールではなく、IT部門の役割を「守りの運用」から「攻めのDX支援」へと広げていくための手段である——。
岡崎の言葉からは、そうした一貫した思想が読み取れる。
双日テックイノベーションは、これまでネットワークの提案から設計、実装、運用までを一貫して支援してきた。
その中で培ってきたのが、進化の速い技術動向を見極め、幅広いベンダー製品の知見と、無線・有線・5G・セキュリティといった複数領域の製品を、実際の運用に耐える形で統合・実装する力である。
単なる製品導入にとどまらず「実際に運用し続けられるか」という視点で設計できることが、同社の価値を形づくっている。
大規模ネットワークの運用は、今静かに、しかし確実に転換点を迎えている。自動化を前提とした設計に踏み出せるかどうかが、今後の運用品質やIT部門の価値創出を大きく左右するだろう。
生成AI技術の成長に比例してネットワーク領域でもAI活用は今後進んでいく。このタイミングで選択する運用のあり方が、数年後の現場負荷とDX推進力の差となって表れてくるはずだ。
※部署名・役職名は取材当時のものです(2026年1月時点)。
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