キャリアネットワークにおいて、装置障害時にも通信を止めないことは重要な要件の一つです。特にコアルータでは、データ転送を担うデータプレーンだけでなく、ルーティング制御や設定管理を担うコントロールプレーンの可用性が、サービス継続性に直結します。
Nokia 7750 SR-2s では、コントロールプレーンを司る CPM (Control Processing Module)を冗長構成とし、さらに NSR (Non-Stop Routing)を組み合わせることで、制御系障害時でもルーティングやトラフィックへの影響を最小限に抑える設計が可能です。本記事では、2回に分けて、CPM 冗長構成の基本動作から、スイッチオーバー時の挙動、 NSR による効果について、実機検証の結果を交えながらご紹介します。
CPMの概要
今回はNokia 7750 SR-2sのコントロールプレーンを司る CPM (Control Processing Module)の冗長構成についてご紹介します。
※NOKIA 7750 SRシリーズについては、前回のブログを参照ください
前回の記事:NOKIA 7750 SRシリーズの取り扱いを開始しました! | STech I Lab | 双日テックイノベーション(STech I)
CPM(Control Processing Module)は SR OS におけるコントロールプレーンの中核を担うモジュールです。ルーティングプロトコルの制御、CLI を通じた設定管理、シャーシ全体の制御処理など、装置の「頭脳」とも言える役割を持っています。
7750 SR-2s では CPM を 2 枚搭載しActive / Standby という形で冗長構成を取ることが可能です。通常運用時は Active CPM がすべての制御処理を行い、Standby CPM は Active 側のステータス情報を常時同期しながら待機します。この構成により、Active CPM に障害が発生した場合でも、Standby CPM が制御をシームレスに引き継ぐことができます。
■CPM の役割決定と起動時の挙動
起動時の挙動は次の通りです。
・先に起動した CPM が Active
・同時起動時は Slot A が優先的に Active
"show card"コマンドで CPM の状態を確認できます。Slot AがActive CPM、Slot BがStandby CPMとなっています。
CLI のプロンプト先頭に スロットが表示されるため、操作対象の確認が容易です。
■Active / Standby のログイン挙動
CPM 冗長構成が正常に動作している場合、ログイン時の挙動にも明確な違いが現れます。
・Active CPM→ login / password を要求
・Standby CPM→ Login not allowed on standby となりログイン不可
なお、この挙動はコンソール接続時に確認でき、Standby CPM への SSH ログインはできません。
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CPM A(active)にコンソール接続
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CPM B(standby)にコンソール接続
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■Active/Standbyの管理アドレス設定方法
CPM 冗長構成を運用するうえで重要なのが、管理 IP アドレスの扱いです。SR OS では BOF(Boot Option File) と呼ばれる、CPM 起動時に読み込まれる基本設定ファイルに、Active 用と Standby 用、それぞれの管理 IP アドレスを定義します。
BOF は OS 起動前の段階で参照される設定であり、管理 IP アドレスやデフォルトゲートウェイなど、装置の初期動作や管理アクセスに直結する情報が記述されます。そのため、CPM 冗長構成では BOF に正しくアドレス設定を行うことが、安定した運用の前提条件となります。
・Active アドレス
→ 常に Active CPM が使用する管理 IPアドレス
スイッチオーバー時、新しい Active CPM が Activeアドレスを引き継ぐ
・Standby アドレス
→ 常に Standby CPM が使用する管理 IPアドレス
スイッチオーバー時、新しい Standby CPM が Standbyアドレス を使用する。sshなどは不可だがpingには応答可能
この仕組みにより、運用者は CPM の物理スロットや役割の変化を意識することなく、「Active CPM の管理 IP」へ接続するだけで運用を継続できます。スイッチオーバー発生時には、新しい Active CPM が Active アドレス を引き継ぐため、接続先 IP アドレスを変更する必要はありません。
なお、Active CPM の切り替えに伴い既存の SSH セッションは一度切断されますが、同一の管理 IP アドレスへ再接続することで、速やかに管理アクセスを再開することが可能です。
■Active/Standbyのマネジメントポート冗長設定方法
CPM 冗長構成では、コントロールプレーンの可用性だけでなく、管理アクセスを継続できるかどうかも重要なポイントになります。通常、Active CPM 側のマネジメントポートがダウンすると、その CPM への管理アクセスはできなくなります。 SR OS では、Standby CPM 側のマネジメントポートを経由して Active CPM へアクセスできる機能として「マネジメントポート冗長(Management Ethernet Redundancy)」が用意されています。
この機能を有効にすることで、Active CPM のマネジメントポート障害時でも、管理セッションを維持することが可能になります。
マネジメントポート冗長は、以下のコマンドで有効化します。
"show redundancy mgmt-ethernet"コマンドでマネジメントポートの冗長状態を確認します。
ステータスがenableとなっていることから、設定が有効化されていることが確認できます。
マネジメントポート冗長が動作している状態では、ポートの表示にも特徴的な挙動が見られます。
Active側のマネジメントポートのケーブルを抜去し、Link downさせます。
show router “management” interfaceの出力では、以下の表示になります。
・オペレーションステータスは Up
・出力ポートが A/1 → B/1
これは、Active CPM のマネジメントポートを物理的に抜去しても、Standby CPM 側のマネジメントポートを使用して管理通信が継続していることを意味します。
また、マネジメントポート冗長には revert パラメータが用意されています。
この設定は、プライマリ(Active)CPM のマネジメントポートが復旧した後、何秒待ってから元のポートに戻すかを指定するものです。
設定可能範囲:1 ~ 300 秒
デフォルト値:5 秒
一時的なリンクフラップ時に即座に切り戻らないよう、待ち時間を設けられる点が運用上のメリットです。
■CPM 冗長におけるファイル同期の仕組み
CPM 冗長構成では、Active / Standby の切り替え(スイッチオーバー)が発生した際に、即座に切り替わることが大事です。そのためSR OS では、Active CPM 上で管理されている各種ファイルをStandby CPM 側へ同期しておく仕組みが用意されています。これにより、スイッチオーバー後も設定や起動環境の差異によるトラブルを防ぐことができます。
コンフィグファイルやOSイメージ等の各種ファイルはCPMに差し込まれているコンパクトフラッシュカードに保存されており、ファイル同期には2種類あり、自動同期と手動同期があります。
自動同期は設定変更時のcommitに連動して、常にActive CPMとStandby CPMの設定情報を揃えておく用途に使われます。
手動同期はその時点の BOF / OS イメージ / コンフィグファイルを明示的に同期したい場合に使用します。
なお、今回は自動同期の仕組みに焦点を当てて紹介します。
自動ファイル同期 (config同期)
CPM 冗長構成では、スイッチオーバー後に設定差分が発生しないことが重要です。SR OS では commit が実行されるたびに、Active CPM 上の コンフィグファイルを Standby CPM へ自動的に同期します。
2026-01-16 11:10:12にcommit完了
commitした時刻に、Standby CPMへconfig.cfgが同期されていることが確認できます。
スイッチオーバーは制御プレーンの役割を Active CPM から Standby CPM へ切り替える処理にあたりますが、その切り替えは手動操作と障害発生の自動切換えの両方があります。
"show redundancy synchronization"コマンドでStandby CPM側のステータスを確認できます。ステータスが“standby ready” となっており、Standby CPM が Active CPM のスイッチオーバーに備え、システム制御を引き継げる状態で待機していることが確認できます。
手動スイッチオーバー
手動スイッチオーバーでは、管理者が"admin redundancy force-switchover now"コマンドを実行することで、明示的にActive/Standbyを切り替える方法です。
コマンド実行後、Standby CPM が Active に昇格します。
旧 Active CPM は自動的にリブートが実行されStandby CPMとして起動します。
自動スイッチオーバー
自動スイッチオーバーは、Active CPM に障害が発生した場合に装置が自律的に実行します。Active CPM のリブートやクラッシュ、応答喪失、オンライン抜去といった事象を契機に、Standby CPM が Active に昇格します。
・Active CPMのみのリブートによるスイッチオーバー
"admin reboot active now"コマンドでActive CPMをリブートします。
Standby CPMだったSlot BがActive CPMに昇格しログイン可能となりました。旧Active CPMのリブートを契機にスイッチオーバーが行われたことが確認できます。
・CPMを抜去によるスイッチオーバー
物理的にActive CPM(Slot A)を抜去します。
Slot Aはdown ステータスとなりスイッチオーバーが実行されました、 Active CPM(Slot A) を抜去した場合でも、即座にStandby CPM に切り替わる動作を確認できました。
今回、Nokia 7750 SR-2sの検証を通して感じたポイントは以下の通りです。
- コントロールプレーンの冗長(CPM Active/Standby)が堅牢
- 管理 IP は Active/Standby 切り替わっても 運用者が意識しなくてよい工夫
- Management Ethernet Redundancy により、管理アクセスの継続性も強化
- ファイル同期があることで切り替わった直後でも安定動作できる
コントロールプレーンの信頼性をどう担保するかは、キャリアネットワークの設計において非常に重要です。
Nokia 7750 SR‑2s はその点で、実運用に耐える冗長性がしっかりと作り込まれていると感じました。
第2回はNSRを利用したプロトコルの冗長性についてご案内します。
森永 用成
数十年Juniper製品のプリセールスエンジニアとして活動しています。
2025年度からはプロダクトエンジニアとしてネットワーク商材の立ち上げを実施!
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