穂刈智也

生成AIや高度な分析の活用が広がる中で、商社・卸売業のDXは「新しいツールを導入すること」だけでは前に進まなくなっています。
いま経営に問われているのは、受発注、在庫、会計、物流、貿易といった基幹業務のデータが、経営判断に耐えうる形でつながっているかどうかです。AIは便利な補助役ですが、元になるデータの流れが見えなければ、判断結果の信頼性は高まりません。だからこそ、AI時代のERPは、単なる記録の仕組みではなく、意思決定を支える基盤として捉え直す必要があります。

大手専門商社のERP統合が商社DXに投げかけたことは?

 象徴的な事例として注目したいのが、2026年2月に公表された三菱商事プラスチックのERP統合です。同社は営業システムと会計システムを長く独立運用しており、連携は1日数回のバッチ処理に依存していました。そのため、データ整合性の確認作業や紙を前提とした業務が残り、データドリブン経営を進めるうえで基盤面の課題を抱えていました(※1)。

今回の刷新では、純国産ERP「GRANDIT」を活用して営業と会計のリアルタイム連携を実現し、紙で運用していた業務プロセスを137件から33件まで削減し、年間約2万3,000枚の紙削減も見込んでいます。

ここで重要なのは、単にシステムを更新したことではありません。営業で発生した数字が会計までどう流れ、どこで参照され、どう使われるかを見えやすくしたことに、この事例の本質があります。商社DXにおいては、この「データの流れを説明できる状態」こそが、AI活用や統合管理の出発点になります。

(※1) https://www.sojitz-ti.com/ja/press/mcplasgrandit.html

「データリネージ」とは何か

今回押さえておきたいのが、「データリネージ (Data Lineage)」という考え方です。
データリネージとは、データがどこで生まれ、どこへ移動し、どのように変換され、最終的にどこで使われたかを追跡できる状態を指します。商社・卸売業でいえば、受注データが在庫引当、出荷、請求、会計処理へどうつながったのかをたどれる状態をイメージすると分かりやすいでしょう。難しいIT用語に見えますが、要するに「この数字はなぜこうなっているのか」を説明できるようにする考え方です(※2)。

(※2) https://www.ibm.com/think/topics/data-lineage

なぜAI時代にデータリネージが重要になるのか

AI時代にデータリネージが重要になるのは、AIの出す答えそのものよりも、その答えを信頼できるかどうかが問われるからです。
元データの出どころがあいまいだったり、途中の変換や補正が追えなかったりすると、予測も分析もブラックボックスになりやすくなります。経営層がAIを意思決定に活用するにも、情報システム部門が内部統制や説明責任を担保するにも、データの流れが見えることが前提になります。AIを導入する前に、まずERPや周辺システムを含めた基幹データの流れを整理する必要があるのは、このためです(※3)。

(※3) https://www.ey.com/ja_jp/insights/technology/data-driven-management-and-next-gen-erp-in-the-ai-era
 

商社・卸売業でデータリネージが見えないと何が起こるのか

商社・卸売業では、営業、購買、物流、貿易、会計が部門ごとに最適化されてきた結果、同じ取引でも複数のシステムやExcelにまたがって管理されていることが少なくありません。この状態では、売上見込、在庫、粗利、債権、与信、貿易関連情報が一つの流れとしてつながらず、会議のたびに数字を突き合わせる運用になりがちです。

三菱商事プラスチックの事例でも、営業と会計が分断されていたことで、データ整合性の確認作業が発生していました。つまり、データリネージが見えない状態は、現場の手間だけでなく、経営のスピードも落としてしまうのです。

 

さらに、AIや高度な分析を活用しようとしても、入力元が複数に分かれ、途中で人手の転記や補正が入る状態では、結果の信頼性が揺らぎます。

外資ERPであるSAP S/4HANAやOracle EBSは高機能で、グローバル展開に強みを持つ一方、日本の商慣習に合わせた個別対応が積み上がると、データの流れが複雑化しやすい面があります。検収、都度請求、掛取引、手形決済といった実務要件に対応する過程でアドオンや運用調整が増えれば、改修のたびに時間もコストもかかり、どのデータが正なのかを追いにくくなります。これは、単なるIT運用の問題ではなく、統合管理と経営判断の質に関わる課題です。

ERPでデータリネージを経営に生かす

だからこそ、データリネージを本当に機能させるには、BIやAIツールを後付けする前に、基幹業務そのものをつなぐERP戦略が欠かせません。
受注、在庫、会計、物流、貿易の情報が同じ基盤に乗っていれば、「どこで数字が変わったのか」「なぜこの判断になったのか」を追いやすくなります。その先で初めて、AIによる分析や自動化も経営に役立つ形で回り始めます。ERP投資を単なるシステム更新ではなく、「意思決定モデルを刷新する経営のアップデート」と捉える視点が重要になるのは、このためです。

双日テックイノベーションの商社・卸売業向けGRANDIT構築サービスは、商社グループの情報システム企業として培ってきた業務知識を土台に、商社向けアドオンテンプレートや豊富な保守・運用実績を活かしながら、統合管理の基盤を現実的に整えやすいのが強みです。
過剰な個別開発に頼りすぎず、段階的に統合管理を進めやすい点は、AI時代のERP選定において大きな意味を持ちます。データリネージは単なるIT用語ではありません。商社・卸売業がAIを使いこなし、経営判断の精度と速度を高めるための土台です。これからのERP戦略では、機能の多さだけでなく、データの流れをどこまで説明できるかという視点が、ますます重要になるはずです。
気になった方は、ぜひWebページもご覧ください。

双日テックイノベーションの「GRANDIT」事業についてはこちら

カテゴリー

タグ

お気軽にご相談ください。

Exhibitions & Seminarsイベントセミナー

資料ダウンロード

関連ソリューション・関連製品

ProLabs(プロラボス)
ProLabs(プロラボス)
ProLabsは高品質かつ低価格のサードパーティ製光トランシーバーを提供いたします。業界標準規格品やベンダー互換品など豊富な製品ラインナップを揃えております。

ProLabsは高品質かつ低価格のサードパーティ製光トランシーバーを提供いたします。業界標準規格品やベンダー互換品など豊富な製品ラインナップを揃えております。