本記事は、通信事業者やデータセンター事業者のネットワーク設計・運用に携わるエンジニアの方を対象としています。
PSU(電源モジュール)のN+1冗長だけでは見落としがちなリスクや、7750 SR-2sが備えるPower Management 機能の役割を理解いただくことで、より実践的な高可用性設計のヒントを得ていただくことを目的としています。

多くの装置では複数のPSUを搭載し、電源冗長構成を実現しています。
しかし、PSUを冗長化していても、電源モジュールの故障や電源系統の喪失が発生した場合、供給可能な電力が不足し、システム停止やサービスダウンにつながる可能性があります。

7750 SR-2sには、このような状況において限られた電力をどのように配分し、どの機能を優先的に維持するかを制御する「Power Management」機能が実装されています。この機能により、電源障害発生時にもシステムの可用性維持を支援します。
本記事では、Power Managementの基本的な仕組みから、電源障害発生時の保護動作までを、実機検証結果を交えながら分かりやすく解説します。

Index

1. 7750 SR-2s ACモデル電源構成

7750 SR-2sハードウェア概要

7750 SR-2s ACモデルのPSUスペックは以下の通りです。

7750 SR-2s ACモデルの電源供給図(例)

2. Power Managementとは?

Power Managementとは、シャーシ内の電力供給状況を監視し、電力不足時にシステムを保護するための機能です。電力供給能力が不足した場合、優先度の低いカードから順番に停止し、システム全体のダウンを防ぎます。
PSU故障、電源フィード断、電源ケーブル抜去などの障害が発生した場合でも、制御系モジュールやファンへの給電を維持しながらシステムを動作させることが可能です。

3. Power Managementの状態を確認

Power Managementの設定や現在の状態は、以下の2つのコマンドで確認できます。

show chassis power-management requirements

show chassis power-management utilization

一見すると似たような出力ですが、それぞれ役割が異なります。

requirementsは「最大必要電力要件」を確認するコマンド
requirementsでは、「もし全てのモジュールがフル稼働した場合、どれだけの電力が消費されるか」を確認できます。
 
utilizationは「実測値」を確認するコマンド
utilizationでは、「実際に今どれだけ電力を消費しているか」を確認できます。 

各コマンド出力の主なパラメータの用語は以下の通りです。

4. Power Managementの動作

Power Managementは、Power Zone と呼ばれる電力管理単位ごとに電力状況を監視しています。Power Zoneとは、システム内の電力供給を物理的・論理的に分割した管理単位であり、利用可能な電力容量や消費電力、必要電力をゾーンごとに管理します。
※7750 SR-2sではPower Zoneは1つになります。

Power Managementは各Power Zoneの状態を監視し、電力不足が発生した場合にはシステムを保護するための制御を実施します。その際の動作方針として、以下の3つのモードを設定することができます。

・None
電力不足が発生しても、Power Managementによるカード停止は実施されません。
・Basic(デフォルト)
カード停止条件 : Power Capacity < Safety Level
カード起動条件 : Power Capacity > Reqd. + Reserve
・Advanced
カード停止条件 : Power Capacity < Reqd. + Reserve
カード起動条件 : Power Capacity > Reqd. + Reserve

Power Managementのモードにより、カードの停止条件と起動条件が異なります。
Basic モードはカードの停止条件と起動条件で異なる閾値が適用されます。停止は Safety LevelがPower Capacityを上回った場合に発生し、カードを起動するにはPower CapacityがReqd. + Reserve を上回る必要があります。
Advanced モードは停止・起動ともに Reqd. + Reserve が基準となり、Basic モードと比較してより早い段階でカードを停止する、より厳格な電力管理モードです。

 

5. 実機検証

今回の検証では、電源障害発生時に Power Management のデフォルト設定である Basicモード がどのように動作するかを確認しました。

・検証条件

Power Management は以下の設定で実施しました。

カードのPriorityはデフォルトで150に設定されています。Priorityは値が小さいほど優先的に保護されるため、本検証ではCard 1のPriorityを100に変更しました。この設定により、Power Managementが動作した場合はCard 1が優先的に維持され、Card 2が先に停止します。

また、今回シャーシには3台のPSUを搭載しており、各PSUは3000Wの電力を供給可能です。そのため、初期状態の Power Capacity は 9000W となります。

・検証手順

電源障害を模擬するためにPSUを2台抜去し、Power Capacityの減少に対してPower Managementがどのように動作するかを確認しました。

手順は以下の通りです。
  1.初期状態の確認
  2.PSUを2台抜去し、Power Capacityを9000Wから3000Wへ低下させ、カードの状態を確認する

1.初期状態の確認

システムの電力キャパシティ(Power Capacity)9000Wに対し、システムがフル稼働した際の電力値(Total Required)が  3470Wになっている為、十分な電力が確保されており、全カード正常稼働している状態です。

2.PSUを2台抜去し、Power Capacityを9000Wから3000Wへ低下させ、カードの状態を確認する

PSUを2台抜去し、Power Capacityを9000Wから3000Wへ低下させます。
Power Capacity(3000W)がSafety Level(3470W)を下回る状態となり、「カード停止条件」に達しました。カードの状態を確認したところ、Card 2がLo Power状態となり停止していることを確認できました。

これは、システムが電力不足から装置を保護するため、自動的にカードを停止したことを示しています。BasicモードではPower CapacityがSafety Levelを下回ると、システム保護のためにカードが停止することを確認できました。

6. まとめ

今回の検証では、Power CapacityがSafety Levelを下回ると、Power Managementによる保護動作が実行され、優先度の低いカード が停止することを確認しました。Power Managementは、電力不足時に一部のカードを停止させることで、システム全体を保護する仕組みです。
7750 SR-2sではPSUの冗長化だけでなく、Power Managementによって電源障害発生時のシステム動作が適切に制御されていることも確認できました。
Power Managementは普段の運用では意識する機会の少ない機能ですが、PSU故障や電源フィード断といった障害発生時には重要な役割を担います。そのため、7750 SR-2sの設計・運用においては、PSUの冗長構成だけでなく、電力不足時にPower Managementがどのような動作を行うのかについても理解しておくことが重要です。
今回の検証では、Power Managementがシステムの可用性維持に欠かせない機能であることを確認できました。今後は、7750 SR-sシリーズの省電力機能についても実機を用いて検証し、その動作や効果を紹介していきたいと思います。

今回ご紹介したNokia 7750 SR-2sについて、さらに詳しく知りたいお客様には、打ち合わせでの詳細な説明も可能ですので、ぜひお問い合わせください。御見積や製品カタログなどのご要望についても、以下の「お問い合わせ」ボタンよりお問い合わせください!

新田 翔也

3年目のネットワークエンジニア。Nokia 社 IPネットワークのプロダクトSEとして検証業務や製品立ち上げ業務を中心に担当。

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