前編では、AGV/AMRが停止する原因の多くがロボット本体ではなくWi-Fiネットワーク側にあることを解説しました。
特に

  • ハンドオーバー失敗
  • 電波強度不足
  • 電波干渉
  • AP過負荷
  • オフィス向けWi-Fi設計

といった問題が、現場で発生する停止トラブルの大きな要因となっています。

では、これらの課題に対し、なぜローカル5Gが有力な解決策となるのでしょうか。実はその理由は単純な「通信速度の速さ」ではありません。

真に重要なのは、①移動体通信を前提として設計されたハンドオーバー機能、そして②通信を優先制御できるQoS(Quality of Service)機能です。 

工場や物流倉庫は日々変化します。設備が増設される、ラック配置が変わる、在庫量が変化する、人やフォークリストの動線が変わる、などなど。

こうした環境変化の中でもAGV/AMRを安定稼働させるために、ローカル5Gはどのように機能するのかを詳しく解説します。

Index

1. 移動体通信を前提に設計

ローカル5Gとは、企業や自治体など通信事業者ではない組織が、自らの建物内・敷地内でユースケースに応じて個別に構築する専用の5Gネットワークをいいます。

AMR運用に最適化した無線ネットワークという観点から、Wi-Fiとローカル5Gとの最大の違いは、移動体通信を前提に設計されているかどうかという点です。

そもそも設計思想が違う

まず理解すべきなのは、Wi-Fiはもともと移動するもの向けに設計された技術ではないということです。Wi-Fiはオフィス向けに設計された技術です。用途もメール、Webサービスの利用、チャット、ビデオ会議が中心であり、そして(もっとも重要なポイントとして)多少の通信断が発生しても許容される環境が想定されています。

しかし、AMRでは数秒の通信断でも安全停止のトリガーになり、ひいてはそれをミッションの停止までにつながり得るということは前編で触れたとおりです。

これに対し、ローカル5Gで利用されるセルラー通信は、自動車や鉄道、バス、携帯電話など、そもそも移動するものからの利用を前提に設計されています。AGV/AMRとの相性がいいのは当然ともいえます。

2. 基地局によるハンドオーバー制御

この点を「ハンドオーバー」の仕組みの点から深堀りします。ハンドオーバーとは、移動中に接続先のアクセスポイント(AP)を切り替えることです。ハンドオーバーの失敗がAGV/AMRの最も多い停止原因でした。

Wi-Fiでは、このハンドオーバーを端末側が行います。AMRで言い換えると、

  • 電波測定
  • AP選択
  • APの切り替え判断

をAMR側が行わなければいけません。それ故、AMRが一時的に電波悪化した環境でAP選択をミスると停止してしまいます。

これに対し、ローカル5Gではハンドオーバーはネットワーク側(基地局)で制御します。つまり、ネットワーク側で移動する端末(AMR)を監視し、その端末が接続するべき最適なAPを指示します。これにより、移動中の通信断発生率を大幅に低減できます。 

AGV/AMRに適切な無線ネットワーク構築を検討している方へ
▶ローカル5G Celona の詳細へ

3. AMRの制御通信を優先するQoS

ハンドオーバーに加えて、ローカル5Gのもつもう一つ極めて重要な機能が「QoS(Quality of Service)」機能、つまり通信の優先順位を制御する仕組みです。

まず大前提として、AMR制御通信の通信量はそれほど多くありません。一般的なAMRでは、

  • 位置情報
  • 制御情報
  • テレメトリ
  • 状態監視

が中心です。通信量だけ見れば、Web会議やYouTube視聴の方が圧倒的に大きいです。
つまり、AMRの安定稼働に必要なのは、「大容量通信」ではなく「必要なデータを確実に届ける」ことです。 

Wi-Fiはベストエフォート

現代の工場や倉庫では大量の通信が流れています。
例えば、

  • AMR制御通信
  • IPカメラ映像
  • Web会議
  • PC通信
  • AI画像解析
  • センサーデータ

が同時に流れています。

Wi-FiはCSMA/CA方式と呼ばれる、他の通信が終わるのを待って空いたらすぐに送る「早い者勝ち」の通信方式を利用しています。それ故、誰かがWeb会議を始めた途端、わずか数十kbpsしか必要としないAMR制御通信が、Web会議のトラフィックに埋もれてしまうことが起こりえます。

データ量は少なくても、重要度は圧倒的に高い。ここがポイントです。 

AGV/AMRにおけるQoS活用例

ローカル5Gでは、AGV制御通信に高優先度を割り当てることができます。たとえネットワーク全体が混雑していても、AGV制御通信は優先的に処理させることが可能です。

例えば次のような優先順位設計をすることができます。

最優先
AGV/AMR制御通信

  • 走行制御
  • 位置制御
  • 障害物情報

中優先

  • MES/WMS連携
  • 作業指示
  • 在庫情報
  • 実績データ 

低優先 

  • 映像系
  • 監視カメラ
  • 録画データ

最低優先

  • 一般業務通信
  • インターネット
  • メール
  • Web閲覧 

このように通信を明確に分離し、優先順位付けした上で、AMRの制御通信に必要な帯域を割り当てることが可能です。 

4. ローカル5Gが変化に強い理由

前編で解説したように、工場や倉庫のネットワークは完成した瞬間がゴールではありません。むしろ運用開始後から変化し続けます。
例えば、

  • 新ライン追加
  • ラック増設
  • 在庫量増加
  • 生産計画変化
  • AMR増車
  • 新機器導入

によって無線ネットワークの環境は常に変わります。「導入時は問題なかった」は全く安心材料になりません。

工場や物流倉庫の無線ネットワークを考える際、多くの人は「電波が届くかどうか」に注目します。しかし、AGV/AMRの安定運用において本当に重要なのは、導入時の通信品質ではなく、環境が変化した後も通信品質を維持できるかです。

Wi-Fiが苦手とするのは、まさにこの「変化への追従」です。電波環境が変化すると、アクセスポイントの接続バランスが崩れたり、ハンドオーバーの失敗が増えたり、監視カメラやハンディターミナルの増加によって帯域不足が発生したりします。その結果、AGV/AMRの制御通信が影響を受け、安全停止につながります。

一方、移動体通信を前提に設計されたローカル5Gは、AMRが稼働する環境が変化したとしても、ネットワーク側が通信品質を監視しながら、最適な基地局へ接続を切り替えることができます。つまり、環境変化によって電波状態が変わっても、通信断が発生しにくい仕組みになっています。

さらにQoS機能によって、AMRの制御通信に最優先順位を付与できます。仮にAMR導入後に、監視カメラの増設やAI画像解析の導入によって通信量が急増したとしても、AMR制御に必要な通信は優先的に確保されます。言い換えれば、無線ネットワーク利用者(ヒト・モノ・コト)が増えても、AGV/AMRの通信品質を守ることができるのです。

環境が変化したとしても最適な基地局へ接続を切り替えることで通信断を防ぎ、QoS機能によって制御通信を保護すること。これによりAGV/AMRを止めないネットワークを実現できること。これこそが、工場や倉庫のような変化し続ける現場における、ローカル5Gの最大の価値です。 

5. おわりに

今後、AMRが数台から数十台、さらには数百台規模へ拡大し、スマートファクトリー化が進んでいく中で、企業は単に「Wi-Fiでつながるか」ではなく、「5年後、10年後の自動化基盤として本当に耐えられるネットワークか」という観点で無線インフラを再評価する必要があります。

もちろん、ローカル5GとWi-Fiとは相互に排他的なものではなく、適材適所で使い分ける「ハイブリッド」無線ネットワークが現実解であり、最適解でもあります。

また前編でも触れたように、一般的にAMRのベンダーはネットワークの専門家ではありません。それ故、AGV/AMR導入で成果を上げるためには、AMRベンダーと現場担当者だけでなく、ネットワークベンダー、情シス担当者などの関係者が密に連携してプロジェクト推進する必要があります。

AGV/AMRの本格運用を検討しているユーザー企業のご担当者様はもちろん、自社のロボットによりお客様の自動化を実現したいAMRベンダー様は、双日テックイノベーションへお気軽にご相談ください。

AGV/AMRに適切な無線ネットワーク構築を検討している方へ
▶ローカル5G Celona の詳細へ

投稿者名 畑和之
プロフィール 双日テックイノベーションでプライベート・ワイヤレスネットワークのプロダクトマネジメントを担当。趣味はスポーツ観戦。あと、猫を2匹飼ってます。

執筆者
畑 和之

双日テックイノベーションでプライベート・ワイヤレスネットワークのプロダクトマネジメントを担当。趣味はスポーツ観戦。あと、猫を2匹飼ってます。

 

カテゴリー

タグ

お気軽にご相談ください。

Exhibitions & Seminarsイベントセミナー

資料ダウンロード

関連ソリューション・関連製品

ProLabs(プロラボス)
ProLabs(プロラボス)
ProLabsは高品質かつ低価格のサードパーティ製光トランシーバーを提供いたします。業界標準規格品やベンダー互換品など豊富な製品ラインナップを揃えております。

ProLabsは高品質かつ低価格のサードパーティ製光トランシーバーを提供いたします。業界標準規格品やベンダー互換品など豊富な製品ラインナップを揃えております。

っっさあ

テキスト