AIを導入するだけでは、仕事は変わらない。
コンテキスト、トークセッション、セキュリティ。
Glean GO 2026で示された3つの論点から、企業でAIを使い続けるための条件を読み解きます。

2026年8月、サンフランシスコで開催されたGleanのイベントには、5,000人以上がキーノートを視聴。前年の1日開催から2日間へ拡大したイベントで、企業AIの現在地と次の課題が共有されました。

今回のウェビナーでは、現地参加した池上啓司がキーノートの要点を紹介し、Glean Technologiesの岩井智朗氏とともに、企業でAIを活用する際に避けて通れない論点を掘り下げました。中心となったのは、次の3つです。

Index

AIに必要なのは、データへのアクセスではなく、企業の背景文脈

AIへの指示を何度も修正する「ボットシッティング」。その原因は、モデルの性能だけではなく、AIが組織の前提を知らないことにあります。

「違う、そうじゃない」とプロンプトを打ち直し、背景を説明し、また修正する。AIを使っているはずが、いつの間にかAIの面倒を見ている。この状態を、キーノートでは「ボットシッティング」と表現していました。

人は入社後、会議や対話、仕事の履歴を通じて、組織のコンテキストを少しずつ学びます。どのような判断が好まれるのか、誰がどの領域に詳しいのか、顧客とどのような関係があるのか。文書化されていない「なぜ」の部分まで含めて理解することで、数か月後に仕事の質が上がっていきます。

一方、企業には「何をしたか」という結果は残っていても、「なぜその判断に至ったか」という背景が残っていないことが少なくありません。Gleanは、複数のSaaSに残る仕事の痕跡をつなぎ合わせ、AIに企業固有の文脈を渡すアプローチを取ります。

コンテキストとは、企業の集合的な人間知性と経験 -キーノートで示された定義

ENTERPRISE GRAPH × PERSONAL GRAPH
エンタープライズグラフ
は、文書、人、チーム、会話、業務システム、活動履歴、プロセスなど、会社全体の関係性を捉えます。
そこに、個人の権限、情報の新しさ、協業関係などを捉えるパーソナルグラフを組み合わせ、検索結果に背景文脈を加えて回答を生成します。

ここで重要なのは、単に外部ツールのデータへ「つながる」ことと、情報同士の関係性や権限、過去の活動履歴まで含めて「理解する」ことは異なる、という点です。MCPなどの接続技術を活用しながらも、企業の文脈をどのように構造化し、回答へ反映するかが差別化のポイントになります。

AIは「たくさん使う」から「価値を生むように使う」へ

生成AIの導入初期は、利用を増やすことがKPIになりがちです。しかし、モデルの高性能化と利用量の増加に伴い、請求額と成果のギャップが新たな経営課題になっています。

キーノートでは、AIの請求書を見て驚いた経験があるかという問いに、会場の約半数が手を挙げたと紹介されました。年間予算を数か月で使い切るケースもあるという話からは、AI活用が実験段階を越え、利用量を管理すべきフェーズに入ったことが伝わります。

トークン使用量を抑制
ウェビナー内で紹介された
比較結果

Gleanの出力を支持
同じく紹介された満足度比較

 

コストと成果の視点
使った量ではなく得られた
価値を見る

ここで提示された考え方が「トークンイールド」、つまり使ったトークンに対してどれだけの効果が得られたかという視点です。AIを使わないことが正解なのではなく、軽い仕事には高速・低コストなモデルを、重要な判断には高精度なモデルを割り当てる。車にたとえるなら、近所への移動に毎回高級車を使う必要はない、という発想です。

モデル選定を個人のリテラシーだけに委ねない
モデルの価格や性能は短いサイクルで変化します。全ユーザーが常に最新情報を追うのではなく、システム側が質問の内容に応じて適切なモデルを選ぶことが現実的です。

検索計画と前処理で、後段の負荷を減らす
文脈を踏まえて検索対象を絞り、フロンティアモデルへ渡すクエリを最小化する。検索と生成の間にオーケストレーションを置くことで、品質とコストの両立を狙います。

セキュリティは、単一の操作ではなく行動の連鎖で見る

コピー、ダウンロード、共有。個々の操作だけを見れば正当でも、組み合わせや順序によっては情報漏えいにつながる可能性があります。

ウェビナーで紹介された「文脈認識型」の脅威検知は、誰が、どのデータに対して、どのような順序で操作したかを捉えます。単一アクションを機械的に良し悪し判定するのではなく、組織が定義した振る舞いと照合し、全体として適切だったかを検知する考え方です。

この視点は、人の操作だけでなく、AIが自動的に実行するアクションにも適用されます。AIが業務へ深く入り込むほど、回答の正確さだけではなく、どの権限で何を実行したのかを追跡できるガバナンスが重要になります。

Security principle
「コピーした」だけでは判断しない。
誰が、どのデータを、何の目的で、どの順序で扱ったのか。
文脈を捉えて初めて、AI時代のセキュリティ判断に近づけます。

導入事例が示す、企業AIの実装ポイント

イベントでは、テクノロジー企業だけでなく、製造、医療、金融、コンサルティングなど、情報量と権限管理の重要性が高い企業の事例が共有されました。

GENERAL MOTOR

6万人へ90日間で展開。品質保証では、複数システムにまたがる過去事例の調査から次のアクションまでを、数時間から数分へ短縮した事例が紹介されました。販売店の業績管理・コーチングや、4万人規模の人事評価支援にも活用されています。

NVIDIA

エンジニアの約90%が日常的に利用し、製品のバグを見つけるエージェントが人気のユースケースとして紹介されました。

SNAP

ITヘルプデスクで活用し、チケットを62%削減、延べ3万時間を削減した事例が共有されました。

DAVITA

紙やFAXを含む患者情報を横断して提供。ケア担当者が患者と過ごす時間を5分増やせたことが、金額だけでは測れない成果として語られました。

DELOITTE

案件に適した経験者の検索・アサインを支援。従来は約1週間かかっていた人材のリストアップを、質問ベースで迅速化した事例です。

これらの事例に共通するのは、チャットの便利さだけではありません。業務システムや活動履歴とつながり、検索結果を次の意思決定やアクションへ接続している点です。特に、情報量が多く、権限管理が複雑な企業ほど、コンテキストの価値を出しやすいという見解が示されました。

プロダクトは、受け身の検索から業務の実行基盤へ

製品アップデートは、Proactive AI、Glean Intelligence、Glean Platformの3領域で紹介されました。

Proactive AI
質問を待つだけではなく、ユーザーに働きかけるAIへ。業務の状況に応じて、必要な情報やアクションを先回りして提示する方向性です。

Glean Desktop / チームチャット
ローカルファイルやアプリケーションコードを扱いながら、企業データ、権限、業務コンテキストと組み合わせて利用。チームチャットでは、個人ごとに異なるコンテキストを共有しながら仕事を進められます。

Glean Intelligence
ユーザーやチームごとの利用量、トークン残量、今後の消費見込みを可視化。残量に応じた省電力モードや、仕事に応じてモデルを選ぶオートルーティングも紹介されました。

AI Gateway
Copilot、Claude、社内チャットなど、既存のフロントエンドを置き換えず、その背後でGleanのコンテキストやモデル選定を活用する考え方です。既存投資を活かしながら、AI活用の共通基盤を整える選択肢になります。

参加者から寄せられた質問

  • Q. 個人のメールやPCにある暗黙知を、他のメンバーと共有できますか?
    A. Gleanは各SaaSで設定された権限を踏襲し、本人が見られない情報へ勝手にアクセスすることはありません。元のファイルやメールをチームに共有するなど、ソース側で適切な権限を設定することが前提になります。

     

  • Q. コンテキストによってトークンコストは抑えられますか?
    A.
    回答に必要な情報の見当をつけ、検索計画と前処理で後段のモデルへ渡すクエリを絞ることで、無駄な探索を抑えるという説明でした。繰り返し検索される内容は、企業コンテキストの中で見つけやすくなり、回答の迅速化も期待されます。
     

  • Q. MicrosoftのAI機能との違いは何ですか?
    A.
    Microsoft製品内に閉じた環境ではなく、Boxなど複数のSaaSや業務システムをまたいで企業コンテキストを扱える点が差別化として説明されました。
     

  • Q. AWSやGCPなどの環境にはどのように接続しますか?
    A.
    ウェビナー時点では、SaaS型で利用する方式と、顧客環境へデプロイする方式が紹介されました。顧客環境へのデプロイ先はAWSまたはGCPが基本で、Azureは対応していないとの説明でした。提供条件は最新情報をご確認ください。
     

企業AIの「次の現実解」を見極める

今回のウェビナーが示したのは、AIを導入するかどうかという二択ではありません。企業の仕事にAIを組み込むなら、どのような文脈を理解させるのか、どの程度のコストで成果を出すのか、そして人とAIの行動をどう安全に管理するのかを、同時に考える必要があります。

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テキスト

Context
組織の背景・権限・活動履歴を回答に反映できるか

Security
人とAIの行動を、文脈と権限の中で管理できるか

Economics
利用量ではなく、成果とのバランスを可視化できるか

Proof
自社に近い業務で、継続利用の事例があるか


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「Glean:GO 2026で見えた、エンタープライズAIの次の現実解」
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