業界トップランナーである鍋野敬一郎氏のコラムERP再生計画」第14回「部分最適なデジタル化から全体最適なデジタルイノベーションを目指す」を公開しました。
欧米よりも遅れている日本のデジタル化ですが、日本企業もこれから積極的に巻き返しを図って欲しいと願うところです。企業が取り組むビジネスのデジタル化とは、現場担当者のアナログな業務対応(手作業:マニュアルオペレーション)を見直して、作業実績や作業によるアウトプット(サポートや報告書など)が自動的にデータ化されることを意味しています。ここで蓄積された大量データを活用した新しいサービスが価値を生み出すことを、“デジタルイノベーション”と呼びます。つまり、現在のアナログデータを単純にデジタル化しただけでは、新しい価値を生み出したことにはならないのです。データ化するだけでは、これまでのシステム利用と同じ効率化やコスト削減まででしょう。イノベーションを生み出すためには、もう少し上のレベルから業務オペレーションとシステムを俯瞰した見直しが必要です。
前回ご紹介した通り日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が最近公開した「デジタル化の取り組みに関する調査」2017年度調査結果では、デジタル化の取り組みは大企業から中堅中小企業へ普及が広がっています。(図表1)先行する欧米企業のデジタル化に追いつくために、日本企業はペースをあげてデジタル化に取り組むことが予想されます。しかし、表面的なデジタル化にはリスクが潜んでいます。それは、トップダウンでデジタル化を進める欧米とボトムアップ/カイゼン手法でデジタル化に取り組む日本の文化の違いによるものです。日本におけるデジタル化は内向きの取り組みが多く、現場担当者の業務のやり方(属人的な手作業)を高機能センサーなど使ってピンポイントにデータを収集するやり方です。このやり方の問題点は、業務のやり方が担当者ごと違っているケースが多いというものです。結果として、担当者ごとに業務のやり方が違うのをそのままデジタル化しても、ここから得たデータはバラつくことになります。苦労して収集したデータですが、データ粒度やデータ品質が揃わないため期待した通りの効果が出ないことが想定されています。
これと同じ状況が、日本のERPシステム導入にも見られます。これまで日本企業は、ERPシステム導入にアドオンやカスタマイズで独自のこだわりや操作性を持ち込むやり方をして来ました。その結果、バージョンアップや新しいシステムへの移行に足枷が生じていました。また、担当者や部門ごとにこうした対応をするケースも多く、導入コストや維持コストが肥大化する事例も見られます。デジタル化もERPシステム導入も、本来その前に標準化という取り組みが必要なのですが、この標準化という部分が丸ごと飛んでしまうのが日本の弱点です。今回は、その弱点を克服して部分最適なデジタル化ではなく全体最適なデジタルイノベーションに成功して欲しいと願うところです。
全体最適の視点でデジタルイノベーションに取り組むうえで大切なのが、システム全体の構成です。前回に新しいサービスを構築する例として、「デジタル化したアフターサービス」をあげましたが、そのシステムをマイクロサービスという手法で構築するやり方をご紹介しました。そのポイントは、ERPの機能を利用して必要最小限のシステムのみ開発してこれと連携するというものです。作る機能は最小限にして開発スピートを早く、コストを抑えるやり方です。顧客にサービスを提供すると、顧客のところにある製品(ハードウェア)から膨大なデータを収集することが出来ます。このデータを活用したサービスを顧客へ提供します。顧客からのニーズや要望は、出来るだけ早く対応していきます。このフットワークの軽さが顧客を拡大するポイントになります。他社よりも先行して、幅広い顧客を集めることでさらに大量のデータを集める事ができます。このデータが資産となります。競合他社の製品(ハードウェア)などにもこのサービスを広げる事ができれば、コンペの顧客にサービスを売ることが出来ます。こうした取り組みこそ、デジタルイノベーションによる、新しいビジネスモデルの狙いです。
このようなデジタルイノベーションを想定したシステム構成だと、収集するデータ容量もネットワークでつなぐ製品(顧客が所有するハードウェア)が飛躍的に増えていきます。つまり、従来のオンプレミスのシステムではコストやスケールの限界があります。大量に収集されるデータを管理するためにはクラウドストレージが必要となります。また、顧客ごとにサービスを提供するためには様々なクラウド基盤を利用したアプリケーション開発や大量の処理能力が必要となります。つまり、このシステムを実現するためにはクラウドの利用が必須となります。また、デジタル化したサービスを提供するマイクロサービスは、ERPの機能と連動したシステムであるため出来るだけシンプルで確実な仕組みが必要となります。つまり、オンプレミスとクラウドの混在するハイブリット型のシステムや、複数のクラウドをまたがるマルチクラウド型のシステムとなります。このようなシステム連携は、クラウドインテグレーションと呼ばれる新しいシステム統合技術となります。古いシステムのデータ連携は、ファイルによる連携やバッチ処理による連携でしたが、最近ではWebAPIによる連携が一般的です。(REST APIなど)10年以上前のERPシステムでは、こうしたAPI連携には対応していないものも多くこれが将来ボトルネックとなります。デジタルイノベーションを実現して、他社に対する優位性を維持するためには、ERPシステムも新しく整えた方が良いでしょう。ERP再生によるメリットは、デジタルイノベーションでも有効だと思います。JUASが考えるレガシーシステム脱却へのアプローチでは、システム基盤再構築を行ってうえで、柔軟なシステム構造を「パッケージ活用」と「クラウドの活用」するというものです。デジタルイノベーションを実現するシステム全体のイメージを御覧ください。(図表2、図表3)
今回は、ERPに「デジタル化したマイクロサービス」をつなげることで、顧客へ新しいサービスや価値を提供する仕組みが作れるという内容でした。次回はデジタルイノベーションとERPの相乗効果についてご紹介いたします。レガシーERPと次世代ERPでは、最終的に得られる効果やメリットが大きく異なっているという内容です。
以上
◆このコラムについて
ビジネスコンサルタント 吉政忠志氏(吉政創成株式会社)より
鍋野敬一郎氏の「ERP再生計画」第14回「部分最適なデジタル化から全体最適なデジタルイノベーションを目指す」はいかがでしたでしょうか?
鍋野氏のコラムでも紹介されていた”JUASが考えるレガシーシステム脱却へのアプローチでは、システム基盤再構築を行ってうえで、柔軟なシステム構造を「パッケージ活用」と「クラウドの活用」するというものです。”という件について、私もとても共感できます。経営においても業務においてもシステム運用においても全てにおいてスピードが求められる時代です。このような時代にレガシー時代の構築方法で完全オーダーメイドのシステムをオンプレミス環境上で構築していては、システム運用面でも予算面でも重くて仕方ないです。今から10年以上前は、フルオーダーメイドの業務システムをオンプレミス上の環境に構築するのが最良の時代でした。今は、ERPをクラウド環境で構築、運用しやすくなっていますし、ERPパッケージもかなりこなれてきております。このコラムを掲載いただいている日商エレクトロニクスは以下の業界に特化したERPを提供しています。業界に特化したERPは低コストで導入ができ、メンテナンスも容易です。商社やIT企業の皆様がERPの導入を検討される際に、是非、日商エレクトロニクスの名前を思い出していただきたいです。興味がある方はぜひ以下の商品もご覧ください。
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