障害が発生するたびに、複数の管理画面を開き、機器ごとのログを突き合わせて原因を探していないでしょうか。Zabbixなどによる死活監視は、異常の発生を把握するために欠かせません。一方、マルチベンダー化やクラウド利用が進んだ環境では、「どこで何が起き、どこまで影響しているのか」を確認する作業が複雑になっています。JANOG58では、この課題に対し、Arista CloudVisionとAruba Central+OpsRampを用いて、アラートの確認から原因候補の分析、AIへの追加質問までを比較展示しました。本記事では、デモから見えたAIOpsの実力と、導入前に確認しておきたいポイントをご紹介します。

Index

1. JANOG58出展の背景と現場の課題

ネットワーク運用は今もZabbixやNagiosなどを活用した死活監視が広く利用されています。しかし、マルチベンダー環境が当たり前となった現在、以下のような課題を抱えている現場が多いとの声を多くいただきました。
 
・ベンダーごとの異なるCLI操作による確認
・バラバラなログの突き合わせ
・手作業での複雑な原因解析

 
また、近年では、AIを活用した「原因候補の分析支援や推奨アクションの提示」や「予兆検知」などがトレンドとなっており、運用の負担を軽減し、トラブルの予兆把握や早期対応を支援するAIOpsへの関心が高まっています。こうした背景から、当社ではネットワークの「Observability × AIOps」をテーマに、AristaとArubaのAIOps比較デモをはじめ、HPE Juniper Routing Director、Netscout Pulse、Stellar Cyber、Celona を出展しました。

2. デモで紹介した運用の全体フロー

ブースでは来場者様に向けて、日々のトラブル対応における運用フローがイメージできる構成で、Arista と Aruba の比較デモを行いました。
AIは、チャットボット用途だけでなく、アラート通知、アラート分析にも活用され始めていることを紹介しました。

デモ① 障害発生時の対応フロー比較 Arista vs Aruba
リンクダウンを契機にBGP断が発生する障害シナリオを題材に、アラート確認から事象の確認、AIによる分析提示までの一連の流れと、運用者がAIを活用して事象の深堀りを行うデモをご案内しました。

1. アラート確認:メールやSlackなどへの障害通知をもとに該当アラートを確認
2. 管理画面確認:該当アラートに関連する情報を確認
3. アラート分析:アラートの原因候補の分析支援や推奨アクションの提示
4. 相談(AI) :事象や推奨アクションに関する深掘りはAIチャットボットへ質問(日本語対応可能)

デモ② フルスタック可視化
複数ベンダーのネットワーク機器~サーバー~アプリケーションのトラフィックフローを可視化するデモをご案内しました。

3. 展示を通じて見えてきた各社ツールの良さと課題

今回、AristaやArubaのAIOps製品に加え、ネットワークインフラ全体を網羅するために計6つのソリューションを展示し、お客様のご担当領域に合わせた紹介を行いました。
 
・Arista(CloudVision)
 DCネットワークなど、構成変更や障害発生前後の状態を時系列で追いたい環境に向いています。複数画面やCLIを行き来しながら原因を探している場合、状況確認の効率化が期待できます。

・Aruba + OpsRamp
 サーバーやアプリケーション領域は専門のツール(OpsRamp)に任せたい環境に向いています。ネットワークはAruba Central、サーバーとアプリケーションはOpsRampというようにそれぞれの得意領域へ分担させることで、例えばアプリケーションに関する原因切り分けといった踏み込んだ課題の解決に役立ちます。

・Stellar Cyber XDR 
 ファイアウォールやEDRなど複数のセキュリティ製品が混在し、日々のアラート確認作業に追われている環境に向いています。多様なセキュリティログを集約・相関分析することで、アラート対応の効率化や原因調査の負担軽減という、いわゆる「アラート疲れ」を解消します。

・HPE Juniper Routing Director 
 複雑なルーティング制御が求められる大規模なWAN環境や通信キャリアのバックボーンネットワークに向いています。ルーティングの可視化や、トラフィック制御の最適化が可能です。

・NETSCOUT (Pulse)
 ユーザーの体感品質をモニタリングしたい環境に向いています。「通信が遅い」というユーザーからの申告を受けてから調査するのではなく、クレームが来る前にいち早く兆候を捉えて対処につなげることができます。

一見すると似たような可視化・AIOpsツールであっても、製品ごとのアプローチの違いをお伝えすることができました。一方で、こうしたベンダーツールの特徴や強みに加え、活用にあたって考慮するべき点についてもお伝えしました。
 
・他社製品に対する深い可視化・分析はまだ限定的な部分がある(自社製品の管理が中心)
・AIは大量のログやアラートを整理・要約し、原因候補の抽出を支援することに優れている一方で、運用ポリシーや業務影響を踏まえた最終判断については、引き続き運用者が担う必要がある。

4. 「どれを選べばいいの?」と市場の現状

ご来場者様からは、「フルスタックでの可視化や、マルチベンダーを含めた自動分析・設定ができるツールを探している」「そろそろそういったツールが登場している頃かと思って見に来た」というお声を多くいただきました。また、「たくさんあるけど、どれを選べばいいの?」というご質問もいただきました。
今回のご来場者様は、DC担当、キャンパスの無線担当、キャリアのWANやバックボーン担当、アプリケーション担当など、多岐にわたりましたが、これらすべての領域を単一の製品でカバーし、マルチベンダー環境を同じ粒度で監視・分析できるツールは、現時点では限定的です。

また、現在注目されている汎用LLMをネットワーク運用で活用するには、監視データや構成情報との連携、情報の鮮度、アクセス制御、回答内容の確認方法などを利用者側で設計する必要があります。そのため、すぐに実運用へ適用するには、一定の準備が必要です。

このため、今回ご紹介したようなすぐに使える完成されたベンダーツールを、適材適所で組み合わせて活用することが現実解ではないでしょうか。

5. まとめ:JANOGとAI Agentの今後

今回のJANOGでは、AI Agentを構築や運用に活用するセッション(東京大学、MIXI、LINEヤフーの登壇)が満席となり、高い関心が寄せられていました。ChatGPT等のLLMを開発や運用(ログ要約、スクリプト生成など)に活用することで、これまで多くの時間や工数を要していた作業の効率化が進み、生産性向上につながることを確認できました。Arista CloudVisionのような先進的なプラットフォームに関心を持つ方は、ネットワーク運用の高度化に対する問題意識が高く、最新のAI活用動向やツール選定の判断材料を求めている傾向がありました。

今回の展示を通じて、どの製品が優れているかを決めることよりも、それぞれの製品が得意とする領域や適用シーンを理解することの重要であることが分かりました。当社は今後もベンダー中立の立場から最新技術の検証を行い、お客様の課題に応じた最適なソリューション選定を支援してまいります。

AIOpsの導入効果は、分析機能だけで決まるものではありません。機器から取得できるテレメトリの種類や粒度、履歴データの蓄積状況によって、確認できる範囲や原因分析の精度が変わります。そのため、ツール選定時には、既存機器をどこまで活用できるか、将来の更改時にどのような情報取得を可能にするかも併せて整理することが重要となります。当社では、実機デモや比較検証を通じて、現行環境を前提とした活用方法をご紹介しています。「障害調査に時間がかかっている」「複数製品の管理画面やログを横断して確認している」「AIOpsを検討したいが、何から始めればよいか分からない」といった課題がありましたら、お問い合わせフォームからご相談ください。

吉田 健一郎

ネットワーク・クラウド製品のプリセールスエンジニア。現在はAristaとAruba製品を担当しています。

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