近年、国内のエンタープライズ企業は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきました。その背景にあるのが多種多様なSaaSの存在です。
現在では1社あたり数十のツールを併用するなど、SaaSの多層化が進んでいます。その一方で、現場では、以下のような声が上がっています。
「今のシステムすら使いこなせていないのに、また新しいツールが増えた」
「操作方法がわからず、結局慣れ親しんだExcelや紙の運用に戻ってしまう」
「IT部門への操作問い合わせが激増し、戦略的なIT投資にリソースを割けない」
毎月高額なライセンス料を支払うSaaSも、現場で活用されなければ「負債」でしかありません 。多くの企業が直面するシステム定着の課題をいかに解決するか。本記事では、その鍵を握る「オンボーディングの自動化」と、それを実現する「デジタルアダプションプラットフォーム」(Digital Adoption Platform)について解説します 。
多くの企業がSaaSの定着に失敗する最大の理由は、「導入(セットアップ)」と「定着(活用)」を混同している点にあります。特に、従来のオンボーディングプロセス、オンボーディングツールには、スピードの速い現代ビジネスの中での限界が見えています。
かつてのオンボーディングといえば、分厚いPDFマニュアルの配布や、1回限りの操作説明会(集合研修)が主流でした。しかし、多種多様なシステムが混在する中で、ユーザーがすべてのマニュアルを読み込み、マスターすることは不可能です。結局、実務で操作が必要になったとき、「使い方がわからない」という状況に陥ります 。
ユーザーが操作につまずくたびにヘルプデスクやIT部門へ問い合わせを行う構造は、双方にとって快適ではありません。ユーザー側は回答を待つ間に業務が止まり、管理側は「パスワードの再発行」や「基本的な入力方法」といった定型的な回答に追われ、本来注力すべきシステム改善やDX推進に手が回らなくなります 。
システムを導入した後の活用状況を、担当者は正確に把握できているでしょうか。「ログイン率は高いが、特定の入力画面で多くのユーザーが離脱している」「申請の差し戻しが特定の項目で多発している」といった現場のリアルな行動データが収集できていなければ、有効な改善策を打つことはできません 。
これらの課題は、ユーザーがシステムを使いこなすための「オンボーディング」が、いまだにアナログで非効率な手法に依存していることに起因しています 。
こうした限界を突破するための解決策として、グローバルで注目を集めているのが「デジタルアダプションプラットフォーム」です 。
デジタルアダプションは、単なるシステムの「導入」ではなく、「ユーザーがシステムの機能を十分に理解し、そのポテンシャルを最大限に活用して、意図された目的を達成している状態」を指します 。デジタルアダプションプラットフォームは、この状態をテクノロジーによって効率的に作り出し、オンボーディングを自動化するプラットフォームです。
システムの画面上に直接「操作ガイド」や「ヒント」をオーバーレイ(重ね合わせ)表示します。既存システムを改変することなく、ノーコードで簡単に設定が可能です。システム定着を支援するユーザー体験改善プラットフォームとして、さまざまな業界で有効活用されています。
SaaSは頻繁にUI(ユーザーインターフェース)のアップデートを行います。そのたびにマニュアルを改訂し、周知するのは現実的ではありません。 デジタルアダプションプラットフォームによって、ユーザーは都度マニュアルを開いたり、ヘルプデスクに問い合わせることなく、実務の中で学習することができます。これにより、以下のメリットが生まれます 。
- ユーザーのセルフオンボーディング: 誰かに聞かなくても、画面上のナビに従うだけで作業を完結できる 。
- 「教育」から「支援」へのシフト: 操作方法をあらかじめ教えるのではなく、つまずく瞬間にリアルタイムで助ける 。
- データドリブンな改善: ユーザーがどこで迷ったかをログで分析し、ピンポイントでガイドを修正できる 。
日本企業特有の複雑な業務フローや、ITリテラシーのばらつきを考慮した際、極めて強力な武器となるデジタルアダプションプラットフォームが、双日テックイノベーションが提供する「UX Canvas」です 。
UX Canvasは、既存システムに改修を加えることなく(ノーコード)、後付けでUI/UXを最適化できる「PDCA統合型プラットフォーム」です 。特に社内システムの利用において「従業員が迷わない環境」を構築することで、利用者の体験を大きく改善します 。以下に、EX向上に直結する具体的な機能を紹介します。
画面上で操作手順を順番に案内し、「次に何をすればよいか」をその場で示す機能です。吹き出しやポップアップで操作箇所を示しながら進行をサポートします。
単なる操作説明ではなく、業務プロセスに沿って誘導できる点が特長で、入力順に沿ったガイドや初回ログイン時の導線表示などが可能です。部門や利用状況ごとの出し分けにも対応できるため、オンボーディングや入力ミス防止、差し戻し削減に効果があります。
初回利用時や新機能導入時に、操作方法を段階的に学べるようにする機能です。単発のガイドよりも教育的な役割が強く、「一連の流れ」として理解できるように設計することができます。
設定手順や使い始めの流れを順を追って提示することで、集合研修に頼らず、システムの使い方を習得できるようになります。オンボーディング工数の削減や、立ち上がりの早期化につながります。
入力欄や操作箇所の近くに補足説明を表示し、必要に応じて疑問を解消する機能です。ツールチップは、マウスカーソルを合わせたり、タップしたりした際に表示される、小さなウィンドウです。
「何を入力するのか」「どのルールに従うのか」といった情報を、必要なタイミングで表示できるため、過剰な情報提示を避けながら支援できます。問い合わせの削減や入力ミス防止に有効です。
ユーザーが行うべきタスクや手順を一覧化し、進捗を可視化する機能です。
操作のナビゲーションをリスト化することで、「何からやればよいか分からない」状態を防ぎます。習熟度に応じた設定も可能で、オンボーディングの抜け漏れ防止や定着率向上に寄与します。
入力負担を軽減し、入力ミスを防ぎます。オートコンプリートや過去入力の再利用、テンプレート入力などに対応できます。
特に申請や登録業務では、「正確な入力を継続すること」が重要なため、差し戻しや修正の削減につながり、現場と管理部門双方の工数削減に効果があります。
システム画面上でお知らせを表示し、ユーザーに確実に情報を届ける機能です。新機能や運用変更を、ログイン時や操作タイミングに合わせて通知できるため、「知らなかった」を防ぎ、継続的な活用促進につながります。
アクティブユーザー数や利用頻度などを可視化し、システム全体の活用状況を把握する機能です。
定着度を客観的に評価できるため、継続的な改善や施策の効果測定に活用できます。
特定操作(例:クリック)を記録・可視化する機能です。UI・UXの具体的な改善につなげやすくなります。
ページ遷移や離脱箇所などの行動データを分析し、ユーザーの実際の動きを把握する機能です。
どの機能が使われていないのか、なぜ活用されないのかを読み解くことで、UI/UXや導線設計の改善に役立ちます。
システム画面上でユーザーの声を収集する機能です。NPSや自由記述など、柔軟な形式でフィードバックを取得できます。
行動データだけでは分からない不満や課題を把握できるため、定量・定性の両面から改善サイクルを回すことが可能になります。
ある情報通信業の企業(従業員約700名規模)では、新たなシステム導入にあたり、オンボーディングと定着に関する課題を抱えていました。
ユーザー増加に伴い問い合わせ対応が追いつかず、サポート部門の負担が増大していたほか、システムを使いこなせないまま初期離脱が発生するなど、定着率の低下が課題となっていました。
そこで同社では、デジタルアダプションプラットフォームを活用し、オンボーディングの自動化に取り組みました。
初回ログイン時にチュートリアルを表示し、基本操作をその場で習得できるようにしたほか、業務中には操作内容に応じたガイドやヒントを画面上に表示することで、ユーザーが迷わず利用できる環境を整備しました。
その結果、オンボーディングにかかる工数は約60%削減され、さらにシステムの定着率も50%から70%へと向上(約1.4倍)しました。
ある製造業の企業(従業員約1500名規模)では、システムが現場に十分に定着しておらず、問い合わせ対応の増加が問題に。また、購買や在庫登録業務での入力ミスにより、差し戻し対応や修正作業が発生することで、現場・管理部門ともに負担が増大していました。
こうした課題に対して同社では、デジタルアダプションプラットフォームを活用し、入力業務を支援するしくみを導入しました。
業務フローに沿った操作ガイドを画面上に表示し、「何をどのように入力すればよいか」をその場で確認できるようにしました。また、エラー表示やポップアップによって入力ミスや操作漏れをリアルタイムに検知・通知し、ミスの発生を未然に防ぐしくみを整備しました。
その結果、差し戻し率は従来の約6分の1まで減少し、問い合わせ件数も約55%削減されました。業務の手戻りが減少し、全体の業務効率の改善にもつながっています。
ある金融・保険業の企業(従業員約1,000名規模)では、多様な機能が十分に活用されず、深い活用が進んでいませんでした。また、「一度使って終わり」となるケースも多く、システム活用が広がらないことが課題となっていました。
こうした状況に対して同社では、デジタルアダプションプラットフォームを活用し、ユーザーの利用状況に応じた支援を行うしくみを導入しました。
具体的には、操作のタイミングに合わせてポップアップで利用促進メッセージや新機能の案内を表示し、システムとの接点を継続的に生み出しました。さらに、利用傾向や使用していない機能に応じて、最適なタイミングで操作ガイドを提示し、利用の活性化を図りました。
その結果、アクティブユーザー数は2.4倍に増加し、社員のエンゲージメントも5倍に向上しました。システム利用の継続性が高まり、定着と活用の両面で効果が見られています。
A. いいえ、必要ありません。UX Canvasは既存のブラウザーベースのシステムに対して、ブラウザー拡張機能やJavaScriptタグを用いてガイドを「上書き」して表示するしくみです。システムのソースコードを書き換える必要がないため、非常にクイックかつ低リスクで導入いただけます 。
A. 短期的には設定の時間が必要ですが、長期的には「問い合わせ対応」という膨大な「負の工数」が削減されるため、トータルの工数は劇的に減少します。また、UX Canvasは直感的なノーコード設計のため、他社ツールと比較しても作成時間は大幅に短縮されています 。
A. はい。ブラウザー上で動作するシステムであれば、国産・海外製、クラウド・オンプレミスを問わず連携可能です。複数のシステムを跨いだ「横断的なガイド」を作成することもできます 。
A. はい、問題なくご利用いただけます。
画面上に操作ガイドが表示され、「次に何をすればよいか」をその場で案内するため、専門知識がなくても直感的に操作できます。実際の業務の流れに沿って学べるため、無理なく使いこなせるようになります。
A. 専門知識がなくても直感的に運用できます。
ノーコードでガイドを作成できるため、開発スキルがなくても現場主導で設定・改善が可能です。業務に合わせて柔軟に調整できる点も特長です。
A. むしろ削減につながります。
ユーザーが操作に迷った際に、その場でガイドやヒントが表示されるため、多くの疑問を自己解決できるようになります。その結果、問い合わせ件数の削減やサポート部門の負担軽減が期待できます。
どれほど優れたSaaSを導入しても、システムが組織の隅々まで定着し、社員たちが使いこなせない限り、DXの成功はあり得ません。システム導入を「ゴール」と考える時代は終わり、いかに現場を「迷わず使える環境」へ導くか、というオンボーディングの質が、DX投資のROI(投資対効果)を決定づけます 。
オンボーディングの自動化は、単なる工数削減ではありません。
経営層にとっては、 信頼できるデータに基づく「データドリブン経営」の土台となります 。管理者にとっては、 ルーチンワークから解放され、より創造的な仕事へシフトするための鍵となります。ユーザーにとっては、 デジタルツールをストレスなく使いこなし、自身の生産性を最大限に高めるための力となります 。
ぜひ、経営の改革を推進する武器として、デジタルアダプションプラットフォームを検討してみてください。
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